精密工学会誌
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小ねじ強度試験機の試作と評価
巣山 博美秦 勝一郎矢野 宏
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1987 年 53 巻 12 号 p. 1874-1879

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抄録

小ねじ強度試験機を試作し,強度差を与えたM2十字穴付きなべ小ねじの強度試験を行った.得られた特性値を用いて,小ねじ強度及び検出力に影響する因子を調べた結果,次のことが判明した.
(1)強度試験の結果からねじ面の潤滑は最大締付けトルク,軸力及びトルク係数に,座金の有無は締付けトルク及びトルク係数に,座面の潤滑は締付けトルク及びトルク係数に,雌ねじ材質は軸力,ねじトルク及びトルク係数にそれぞれ影響を与えるが,Crめっきの有無はほとんど影響しないことがわかった.
(2)小ねじ強度の検出力から,小ねじの強度試験を行うための最適条件をSN比ηを用いて判断することができた.すなわち,最大締付けトルクにはねじ面のマシン油潤滑,Crめっき小ねじ,S45C雌ねじが高い検出力を示したが,最大軸力に対しては影響する因子が求められなかった.また,弾性限に対する締付けトルクに対してもマシン油潤滑及びCrめっき小ねじの使用が検出力が高く,軸力に対してはねじ面及び座面のマシン油潤滑とS 45 C雌ねじの効果が大きかった.
(3)特性値の誤差を比較するため,変動係数の大小を表現するパラメータη'を用いて解析を行った.締付けトルク及び軸力は最大値及び弾性限値に対してともに変動係数で10%前後であるが,ねじトルク値は約2倍大きい変動係数を示した.
(4)新しく開発した試験機を用いた時のねじ強度の測定誤差を検討してきたが,従来の試験法に比べて精度的にも十分妥当性があると考えられる.

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