精密工学会誌
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円すいダイヤモンドの引っかきによるアルミナ表面のき裂の生成について
張 壁戸倉 和吉川 昌範
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1987 年 53 巻 5 号 p. 826-832

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抄録

刃先丸み半径1.1~1.9μmならびに45μmの円すいダイヤモンドを用いて,切込み深さ0~13μmでHP-Al2O3を引っかいて,表面及び表面下の観察によりHP-Al2O3のき裂生成メカニズムを調べた結果,切込み深さの違いによってき裂生成状態に違いがあり,それらを模式図に表すことができた.
刃先丸み半径1.11~1.9μmの円すいダイヤモンドで,切込み深さ約1μm以下では,材料がほとんど除去されず,構底部にマクロ的な塑性変形を生じ両側にわずかな盛上がりを生じさせる.切込み深さが1~3.5μmでは,微細切削が起こり,材料がわずかに除去され,構底部にスティックスリップが生じ,うろこ状のき裂を生じさせる.切込み深さ3.5μm以上では,き裂が生じて材料が大きく除去され,下向きのき裂が生じる.一方,刃先丸み半径45μmと大きい場合では,わずかな切込みでもき裂が生じる.
き裂進展長さは切込み深さが大きくなるにつれて大きくなり,両者の関係はほぼ一直線である.切込み深さ2μm以下のとき,刃先丸み半径45μmと大きい円すいダイヤモンドによるき裂進展長さは刃先丸み半径1.1~1.9μm円すいダイヤモンドのほぼ8倍で,2μm以上のとき前者は後者の2倍あまりである.

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