精密工学会誌
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差動型アクチュエータの開発研究
毛利 尚武佐藤 益矛齋藤 長男
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1988 年 54 巻 4 号 p. 698-703

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抄録

本報においては,2つの独立に制御可能なアクチュエータを差動歯車を介して機械的に結合した新しい駆動源(差動型アクチュエータ)を提案するとともに,ユニットアクチュエータとして,従来の直流機,誘導構およびステッピングモータを用いた場合の諸特性について検討した.
その結果を表1にまとめる,差動型アクチュエータは,従来のアクチュエータと比較して,いずれも速度制御比が極めて大きく,低回転数領域におけるトルクリップルの小さいことが確認された.
差動型アクチュエータの時定数は,一般に2つ存在するが,2つのユニットアクチュエータの特性が等しいとぎにのみ1つとなる.出力軸系の慣性モーメントを小さく取ることにより,図13に示すように,ユニットアクチュエータ単体の応答性を損ねることなく,速度制御比の大きいアクチュエータが実現可能である.
以上のことから,差動型アクチュエータは大きな速度制御比をとる必要のある各種工作機械や産業用ロボット等に有益なアクチュエータとして寄与すると考えられる.
なお,差動型アクチュエータにおいては,出力軸速度に対して,2つのユニットアクチュエータへの指令速度の組合せは一意に定まらない.基本的にはモータ単体での綱御域(リップル,共振など)を避けて最大トルクが得られる組合せが望ましい.これらは,速度制御,位置決め制御,トルク糊御などの各種制御目的に応じて検討されるべきであり,今後の課題と考える.

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