精密工学会誌
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切削加工学の現状・将来・夢
白樫 高洋
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1994 年 60 巻 1 号 p. 5-8

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抄録

二十数年前,"切削の7不思議というのがあって…"という指導教授の呪文に魅せられて(?),それならば,ととりついたのが運のつき.さしあたって切削現象の観察と"7不思議"を切削とは独立した試験により確認することとし,被削材の流動応力および摩擦特性式の検討を行った.このころ,"マトリクス法による構造力学の解法""マトリクス有限要素法"に接し,変形問題の汎用性のある数値解析法を知り,これを切削の解析に利用した.ところが,当時の計算機の能力は低く,これを有効に利用するため,切削現象の観察を通して,これに対応した種々の工夫を強いられた.この結果,現象の予測への道がひらかれ,以後工具摩耗・欠損の予測へと発展した.しかしいずれの場合も解析手法も重要であるが,明確な目的意識と現象を注意深く観察し,疑問と好奇心を持ち理論的に積み上げることがより重要であることを知らされた.
最近の相次ぐ新素材・新工具材の開発,それらの切削技術にしても,さしあたり必要な被削性・切削性試験を行うことは仕方がないにしても,先入観にとらわれることなく,常に疑問と好奇心を持って現象を注視する必要があろう.

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