抄録
マイクロメカニズムにおけるしゅう動位置決め法の確立を目的に, 摩擦力が支配的な微小片持梁の運動特性を解明した.つぎにこれに基づき, オープンループで実現可能な位置決め法を提案した.また以上の妥当性を, 光ファイバの位置決め実験により確認した.結論を以下に示す.
(1) 質量が微小で動摩擦力が支配的な系においては, 動摩擦係数と押しつけ変位の積で位置決め誤差が与えられる.
(2) 静止摩擦力が大きくなるとスティックスリップが発生し, 位置決め誤差とばらつきはさらに増大する.位置決め誤差は, 静止摩擦係数と押しつけ変位の積で与えられる.
(3) 片持梁の固有振動数より高い振動数でアクチュエータを振動させれば, オープンループでの位置決めは可能である.アクチュエータの振幅が, 静止摩擦力/ばね剛性に一致するとき誤差は最小となる.
以上の結果は, 微小質量のしゅう動位置決め系である, 光ファイバと導波路の組立, しゅう動形磁気ディスクのトラッキング, 原子間力顕微鏡 (接触モード) の走査, 光ディスク用回動形アクチュエータ等の制御, 最適設計に応用できると考えられる.