2023 年 23 巻 1 号 p. 41-52
本研究では,LD等通級指導教室でソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けた終了生を対象に,中学進学後の行動面の適応や支援の状況を調査し,小学校での自立活動の指導や中学校での支援のあり方について検討した。調査の結果,教員の回答から終了生が進学先で概ね適応していることが示されたが,項目によっては教員と生徒の間に困り感の不一致が見られ,両者に互いの困り感に気づいていない状態があることが示唆された。終了生の回答から,「友だちとの関係づくり」と「感情のコントロール」に関わるSSTが,進学先で概ね役に立っていることが示されたが,進学先でも継続してSSTを希望する回答やクールダウンする環境が整っていないためSSTが役に立たないとする回答など個々により般化状況が異なることが推察された。小学校でのSSTは,進学先での適応に関して一定の有効性があるものの,連続的な通級指導体制が十分とは言えない状況の中で,中学の通常学級における継続的な個別の支援の必要性があることが示唆された。