学校心理学研究
Online ISSN : 2432-2865
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巻頭言
原著論文
  • 西村 和代, 越 良子
    2023 年 23 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,小中学生の協力行動を促す要因を学級集団アイデンティティ,児童生徒が感じる学級に対する誇り,学級内での尊重に着目し,検討した。調査対象は,小学5年生277名と中学3年生248名であった。結果は,a)小中学生ともに,学級集団アイデンティティが協力行動を促し,学級集団アイデンティティの強化要因は誇りと尊重であった。b)小学生では誇りが尊重よりも学級集団アイデンティティの強化に影響した。c)中学生では,小学生に比べて学級集団アイデンティティや協力行動に対して,尊重がより強く影響していた。

  • 本田 真大
    2023 年 23 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は援助要請の機能性を向上するための介入法を改良し,援助要請スキルへの効果を検証することであり,そのための予備的研究を行った。大学生を対象とした研究により,従来の方法では統制群と比較して十分な効果は見られないことが明らかになった。そこで介入法を改良して実施した結果,統制群と比較して援助要請スキルの向上が見られた。本研究の結果より,介入効果測定のための尺度の整備や介入対象集団の特性を考慮する必要性について議論された。

  • 宗形 奈津子, 石隈 利紀, 田村 節子, 相樂 直子, 三井 菜摘, 松井 友子, 青島 芳子
    2023 年 23 巻 1 号 p. 25-40
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル 認証あり

    特別支援教育をどのように機能させればよいかを明らかにするため,2018年に特別支援教育を推進している小・中学校の管理職4名の面接調査データを整理統合してモデルを生成した。その結果, ①状況に応じてマネジメントする管理職のリーダーシップ,②特別支援教育コーディネーターを中心とした連携と調整,③支援方針を共有できる校内委員会,④全職員が支援を行える学びと協力,⑤行政,保護者,専門家などの校内外の連携による特別支援教育の機能が示唆された。

  • 大塚 美奈子
    2023 年 23 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,LD等通級指導教室でソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けた終了生を対象に,中学進学後の行動面の適応や支援の状況を調査し,小学校での自立活動の指導や中学校での支援のあり方について検討した。調査の結果,教員の回答から終了生が進学先で概ね適応していることが示されたが,項目によっては教員と生徒の間に困り感の不一致が見られ,両者に互いの困り感に気づいていない状態があることが示唆された。終了生の回答から,「友だちとの関係づくり」と「感情のコントロール」に関わるSSTが,進学先で概ね役に立っていることが示されたが,進学先でも継続してSSTを希望する回答やクールダウンする環境が整っていないためSSTが役に立たないとする回答など個々により般化状況が異なることが推察された。小学校でのSSTは,進学先での適応に関して一定の有効性があるものの,連続的な通級指導体制が十分とは言えない状況の中で,中学の通常学級における継続的な個別の支援の必要性があることが示唆された。

  • 小林 格, 渡邉 創太
    2023 年 23 巻 1 号 p. 53-65
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル 認証あり

    日本においては経験年数を問わず少なからずの教員が授業中の子どもによる私語に対する指導に困難を感じているようである。本研究ではまず,学習理論に基づいた私語指導6指針の有用性について,中学校の授業観察を元に考察した。授業中の問題行動が目立っていた中学生8人による私語と,それらに対しての4人の教師による制止を観察し量的に比較した。結果は,6指針のうち4指針(その制止が十分な強度を持つこと,その制止が私語発生直後にすること,その制止が全ての私語に対しすること,私語の動機づけを弱めておくこと)が子どもによる授業中の私語を低減する上で有用であることを示唆するものであった。続いて,指導経験の浅い第一執筆者がこれら4指針に基づいた方策を同一中学校クラスの授業内で実施し,私語が抑制されたことを確認した。これらの結果は,4指針が教師の経験年数に関わらず私語指導の指針として有用である可能性を示唆する。

実践報告
  • 山内 星子, 鈴木 健一, 杉岡 正典, 松本 寿弥, 織田 万美子, 松本 真理子
    2023 年 23 巻 1 号 p. 67-77
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/01/11
    ジャーナル 認証あり

    新型コロナウイルス感染症流行下において,大学の学生支援組織では様々な支援が行われている。本稿では,2020年度前半に大学で行われた支援を報告した山内・松本・織田・松本・杉岡・鈴木(2020)が指摘した3つの課題を踏まえて2020年度後半に行われた学生支援実践を報告する。3つの課題とはすなわち,オンラインツール活用の促進,チーム援助の強化,学生のメンタルヘルスの長期的なモニタリングであった。オンラインツール活用の促進に関しては,2020年度後半においても50%以上の相談がオンラインで実施され,学生支援におけるその有用性が示された。その一方で,対面でしか行えない支援の存在も改めて認められ,これらの手段をバランスよく使用していくことの重要性について考察した。チーム援助については,教職員を対象とした「気になる学生調査」を契機として促進されたチーム援助について報告した。さらに,長期的なモニタリングに関しては,流行から半年後に学生らのメンタルヘルスについての調査を実施し,その結果に基づいた学生支援の展開を報告した。加えて,新型コロナウイルス感染症流行の特徴である長期化と制限の常態化による学生への影響について考察した。

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