静脈経腸栄養
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臨床経験
ICUにおける人工呼吸器患者に対する間接熱量測定の有用性について
岩川 裕美五月女 隆男佐々木 雅也丈達 知子栗原 美香中西 直子辻井 靖子三上 貴子碓井 理香徳永 道子星野 伸夫赤羽 理也平岩 康之荒木 信一江口 豊柏木 厚典西野 幸典
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2006 年 21 巻 1 号 p. 1_91-1_97

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抄録
ICUにおいて人工呼吸器管理されている重症患者では、複数の臓器障害を合併することが多く、消費エネルギ-量を計算式で算出することは困難である。このような症例について、消費エネルギ-量を測定し、適切な栄養量にて管理することの有用性について検討した。人工呼吸器管理下に集学的治療が施行される症例の安静時消費エネルギ-量(REE)、およびエネルギ-酸化率の指標である呼吸商(RQ)を、間接熱量計を用いて測定し、必要エネルギ-を算出しながら経腸的、経静脈的な栄養管理をおこなった。対象症例は、敗血症やSIRSなどを併発し、集中治療室にて人工呼吸器管理になった後、NST介入の依頼があった16症例(男性10例、女性6例、平均年齢64.1±10.4歳)とした。REE(kcal)およびRQ を隔日に測定し、ICU 退室後は随時の測定とした。また、RQ を考慮しながら、REE に基づく熱量を可能な範囲で投与した。Harris-Benedict式より求めた平均BEE は1295±232kcalであり、測定で得られたREE は2058±424kcal、実際の投与エネルギ-は1960±254kcalであった。NSTの介入開始のBEEとREEの関係は、Y= -38.948 + 1.619 × X、R2 = 0.783(p<0.001)と有意な正の相関を認め、消費エネルギ-は基礎エネルギ-の約1.6倍であった。一方RQは、0.78±0.10からICU退室時には0.87±0.05と経時的に上昇(p<0.05)し、測定時には脂肪乳剤の投与がなかったことから治療経過とともに糖質が有効に消費され、体内脂肪の動員が抑制された結果と考えられた。また、多臓器不全の評価法としての有用性が高いSOFAスコアは、栄養学的介入を行った4週間目には、11.7±3.0から7.9±7.5と改善傾向を示したが、RQの上昇とSOFAスコアには有意な関連は認められなかった。間接熱量測定に基づく栄養管理は、至適投与熱量の設定に基づく栄養管理の実践に極めて有用であると示唆された。
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© 2006 日本静脈経腸栄養学会
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