抄録
症例は40歳の女性で、幼少時より低身長、肝腫大を認めていた。38歳時に近医で糖原病を疑われて当院を紹介され入院となった。諸検査にて糖原病Ia型と診断され栄養治療を開始したが、乳酸、ピルビン酸値のコントロールは不良であったため、退院後に栄養療法の再検討を行った。血糖維持を図るために必要不可欠であるコーンスターチ(とうもろこしでんぷん)は本人の嗜好に合わず摂取困難であったが、乳酸、ピルビン酸値が再増悪したのに合わせ、糖質代謝経路図を用いて病態に関連づけて説明し、疾患に対する意識を高める目的で詳細な食事記録を毎日つけさせたところ徐々に摂取可能となった。これらの指導によりピルビン酸、乳酸値及び痛風結節、肝腫大は改善した。糖原病の食事療法は頻回食でかつ食材に制限があるため、より良い効果を得るためには患者背景を十分に理解するとともに、病態と食事療法の必要性を患者自身が受容できるまで指導し、自発的に実行できるような方向性を提供することが重要である。