静脈経腸栄養
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21 巻, 2 号
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特集:NST活動の標準化とその評価
  • 北澤 康秀
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_3-2_9
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    救急医療においては、重症集中治療が中心業務となる。重症救急患者では、原疾患の重篤性に加え、呼吸・循環動態の不安定性、臓器障害が併存し、エネルギー代謝の亢進と、内分泌異常、高サイトカイン血症など種々の全身状態の変化が起こっている。そのような重症患者に対する栄養管理の理念的目標は、必要なエネルギーを充足させ、全身筋肉量(Lean Body Mass)の減少を最小限に抑えることにある。実際、入院時に高度の低アルブミン血症を呈している例が多く、この低アルブミン血症は死亡率と相関している。栄養管理においては、必要エネルギー量の算出や間接熱量計による測定を繰り返し実施し、その必要量を可能な限り経腸栄養で投与することが求められる。重症患者における、経腸栄養投与の重要性、栄養状態の評価、低アルブミン血症に対する評価と対策、アルブミン製剤の投与の適否について概説し、当院救急集中治療室におけるNST活動を紹介する。
  • 山口 浩司, 巽 博臣, 桂巻 正, 平田 公一
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_11-2_17
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    栄養サポートチーム(Nutrition Support Team;以下、NST)は、栄養障害を有する症例あるいは栄養障害を生じうる症例を的確に拾い上げ、最良と判断しうる栄養学的な介入を行うことをその役割のひとつとしている。特定機能病院等を対象に始まったDPC(Diagnosis Procedure Combination)による包括評価制度では在院期間の短縮が宿命化され、こうした背景のもと病院運営におけるNSTの貢献度は高いものでなくてはならない。一方、術前に栄養不良を呈する消化器癌患者に手術侵襲が加わると、予期せぬ術後合併症を経験する。とくに、進行癌症例では術後合併症は術後成績を左右しうる条件のひとつであり、術後合併症発生率を低下させるための栄養サポートの意義は大きい。
  • 伊藤 彰博, 東口 高志, 梶谷 伸顕, 村井 美代, 二村 昭彦, 井谷 功典, 園田 茂, 笛吹 亘
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_19-2_24
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    身体機能の回復を必要とする脳卒中患者に対する栄養療法は、NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)の普及によって今大きく変わろうとしている。特に急性期病院では、絶食の功罪の明確化が浸透し、早期経腸栄養や早期PEG(Percutaneus Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡下胃瘻造設術)が積極的に実施されるようになってきた。しかし、身体機能回復を目指した栄養管理に関しては未だ多くの問題点が残されており、早急に代謝学的な見地から適正栄養管理法を確立することが必要である。最近の研究によって、安静時エネルギー消費量(REE)はHarris-Benedictの式から予測される基礎エネルギー消費量(BEE)より、約10%高値であることが明らかにされ、累積エネルギーバランスが著しく負に傾かないように栄養管理することが重要である。回復期リハビリテーション病院では、真のエネルギー・蛋白必要量が、わが国のNSTにて用いられている計算値よりも実際には高値であることが多く、さらにリハビリ実施前の分岐鎖アミノ酸(BCAA)の投与や定期的な再評価の重要性など、身体機能回復促進にむけての適切なNST活動が今後重視されるものと思われる。
  • 矢野 邦夫
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_25-2_32
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    最近、各医療施設において栄養サポートチーム(NST)や院内感染対策チーム(ICT)が活発に活動している。これらの対策チームは一見関連性が薄いと思われがちであるが、院内感染対策においてはNSTが重要な役目を果たしている。NST活動によって、中心静脈カテーテルのような感染性合併症を頻回に引き起こす医療器具の使用頻度を減らすことができれば、当然のことながらカテーテル関連感染症を低減できる。また、MRSA感染症のような抵抗力が低下した人に発生する疾患の患者の栄養状態を改善させれば、抵抗力の向上によって感染症がコントロールされる。このように、NSTとICTは強く関連しているので、両者の連携が重要である。
  • 大村 健二
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_33-2_38
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    褥瘡は外傷の既往を有さずに発生する難治性の皮膚潰瘍である。このような創の速やかな治癒には、誘因となった病態の改善が必須といえる。褥瘡の場合、その多くが低栄養を誘因とする。褥瘡発生のハイリスク症例を拾い上げる種々の方法にも、栄養関連の因子が含まれている。2002年10月より褥瘡対策未実施減算が実施されたことを契機に、Stage III以上の院内発生褥瘡は明らかに減少している。しかし、全褥瘡の院内発生率に変化はみられていない。この事実から、ハイリスク症例を拾い上げても局所の処置のみではStage II の褥瘡発生率を低下させることができないと考えられる。一方、NSTによる組織立った栄養管理は、低栄養に加えて他にも重篤な病態を伴った褥瘡に速やかな治癒をもたらしている。加えて院内発生のStage IIの褥瘡を減少させるためには、各医療機関の状況に即したハイリスク症例の拾い上げとNSTが早期に介入を開始できるシステムの構築が必要である。
  • 世古 容子, 東口 高志, 加藤 弘幸, 河北 知之, 矢賀 進二, 大川 光, 大川 貴正, 井瀬 佳子, 福村 早代子, 川口 恵, 田 ...
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_39-2_44
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    栄養管理とは、すべての治療に共通する医療行為の基本であり、個々の症例に応じて適切に実施する必要がある。摂食・嚥下治療においては「経口摂取こそ最高の栄養法であり、栄養管理の最終目標である」を活動目標に掲げ、尾鷲総合病院(以下当院)では2002年4月より摂食・嚥下障害チームが活動し、治療期間の短縮やQOLの向上などの成果が得られている。本稿では、当院のNST活動と摂食・嚥下障害チームをはじめとする各ワーキングチームの関わりについて述べる。
  • 藤井 真, 田中 弥生, 廣瀬 直人
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_45-2_51
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD) では栄養療法が重要である。 COPDでは、栄養障害状態となっていることが多く、栄養障害はさらに呼吸機能を悪化させ、予後を悪化させる。そのため栄養状態の改善がCOPDの治療において重要な役割として認識されている。NST (Nutrition Support Team)はCOPD患者の初期栄養評価(SGA)を行い、客観的栄養評価(ODA)に基づいた必要十分なカロリーを投与する。またCOPDの病態を理解し、脂質の割合を多くし呼吸商を低くすることも重要である。それにより患者の早期離床・早期退院がはかられるのである。
    COPDの治療におけるNSTの各職種、特に管理栄養士や理学療法士の果たす役割は大きい。南大和病院でのCOPD患者に対する栄養療法の変遷とその効果を実際の症例を紹介し、述べる。
  • 月山 克史
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_53-2_57
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    食習慣、運動習慣、休養、嗜好などの生活習慣は、糖尿病や高脂血症、高血圧症、さらにはがん、脳卒中、心臓病など多くの疾病の発症や進行に深く関わっている。これら生活習慣病の対策としては、二次予防(病気の早期発見・早期治療)対策よりも、生活習慣の改善を中心にした一次予防(健康増進・発病予防)に重点を置いた対策の重要性が再認識されてきている。わが国では現在、第三次健康づくり運動「健康日本21」が行なわれているが、各医療機関のNutrition Support Team(NST:栄養サポートチーム)はチームの構成メンバーが各々の専門知識・技術を生かした啓発活動に参画することで貢献できるものと考えられる。すなわち、地域住民に対して生活習慣病に関する予防の知識などを提供する生活習慣病教室の実施である。残念ながら、いまだ十分な活動と評価が行なわれているとはいい難い現状であるが、それは今後の課題としたい。
  • 土岐 彰, 菅沼 理江, 戸井 博子, 渡辺 葉, 岡田 知也
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_59-2_64
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    従来、小児領域での栄養管理は個々の医師の技量に頼った部分が多く、また、その技量は経験に頼った部分が多いため、管理の質にかなりのばらつきが認められていた。NSTの役目の1つとして、このばらつきを少なくし、しかも高いレベルで維持できるようにすることがあげられる。これを解決する手段の1つとして、共通するPCソフトを利用する方法がある。
    われわれは、以前より小児領域の症例に対し、いかに客観的にNSTを活用できるかを模索してきた。現在、大学病院全体としてのNST管理方法は各病棟単位でNSTチームを置くブロック方式を採用しており、小児病棟でも同様のシステムをとっている。
    ここで問題になるのが、小児の栄養評価や栄養必要量が成人と全く異なることである。そこで第6次改定日本人の栄養所要量を基準とした小児独自のソフトを開発することとなった。
    今回われわれが行っている小児領域のNST管理を紹介し、その評価について述べてみたい。
JSPEN 全国栄養療法サーベイ委員会 報告
症例報告
  • 打田 由美子, 中尾 春壽, 太田 美穂, 城 卓志, 伊藤 誠, 竹山 廣光, 真辺 忠夫
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_85-2_90
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    症例は40歳の女性で、幼少時より低身長、肝腫大を認めていた。38歳時に近医で糖原病を疑われて当院を紹介され入院となった。諸検査にて糖原病Ia型と診断され栄養治療を開始したが、乳酸、ピルビン酸値のコントロールは不良であったため、退院後に栄養療法の再検討を行った。血糖維持を図るために必要不可欠であるコーンスターチ(とうもろこしでんぷん)は本人の嗜好に合わず摂取困難であったが、乳酸、ピルビン酸値が再増悪したのに合わせ、糖質代謝経路図を用いて病態に関連づけて説明し、疾患に対する意識を高める目的で詳細な食事記録を毎日つけさせたところ徐々に摂取可能となった。これらの指導によりピルビン酸、乳酸値及び痛風結節、肝腫大は改善した。糖原病の食事療法は頻回食でかつ食材に制限があるため、より良い効果を得るためには患者背景を十分に理解するとともに、病態と食事療法の必要性を患者自身が受容できるまで指導し、自発的に実行できるような方向性を提供することが重要である。
原著
  • 丸山 道生, 長浜 雄志
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_91-2_97
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    “アクアゲル”は水分をゼリー状にしたノンカロリーの食品で、胃食道逆流、誤嚥性肺炎を起こしやすい胃瘻栄養患者に固形化、ゲル化栄養剤を投与する際の水分補給目的で利用される。この“アクアゲル”による胃瘻チューブフラッシングに関して基礎的実験をおこない、従来の方法に比較してチューブを清潔に保つという面で有効であると結論された。“アクアゲル”のチューブ内での微生物増殖の抑制作用は“アクアゲル”が酸性(pH3.7)で、クエン酸や乳酸の有機酸を含んでいるということによる効果と推察された。また、“アクアゲル”の洗浄効果はそれが適度なかたさと付着性が少ない物性を示すゼリー状になっていることから、胃瘻チューブ内を“アクアゲル”が付着残存した栄養剤を効率的に押し出すためと考えられた。“アクアゲル”は、水分補給用食品としての利用以外に、固形化やゲル化栄養剤使用時の胃瘻チューブの有効なフラッシングのために利用できると結論された。
  • 多田 俊史, 下浦 芳久, 浦 芳美, 福岡 幸子, 甲斐 千穂, 詫間 晴美, 西田 玲子
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_99-2_103
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    当院でTPNに関連したと考えられた肝障害が認められた55名を対象とした。TPN開始から肝障害発症までの期間は3日まで6名、7日まで19名、14日まで12名、21日まで6名、28日まで4名、28日以降8名であった。グルコース投与速度は3mg/kg/min未満が16名、3~5 mg/kg/minが21名、5mg/kg/min以上が18名であった。脂肪製剤を14名で使用し、血液培養の結果から原因菌が同定された感染症合併は12名であった。肝胆道系酵素の最大値はAST:160±160 IU/L、ALT:162±169 IU/L、ALP:618±299 IU/L、γ-GTP:230±348 IU/Lで、肝障害の分類では混合型39名、肝障害型8名、胆汁うっ滞型8名であった。輸液内容変更のみの15名中14名が肝機能改善し、1名のみに改善が認められなかった。輸液内容の変更と経口・経腸栄養を開始した18名全員で改善が認められた。輸液内容を変更しなかった22名のうち経腸栄養を開始した2名で改善が認められた。また、内容を変更せずそのまま輸液を継続した20名中10名で改善が認められた。
臨床経験
  • 安田 健司, 野村 秀明, 藤原 英利, 十川 佳史, 酒井 健一
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_105-2_114
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    中等度手術侵襲時の周術期におけるTPN3号輸液製剤1バッグ管理の可能性について検討した。大腸切除術後、5日間以上絶食管理の必要な症例を、TPN3号輸液製剤による1日1バッグ管理群と、投与糖質量、アミノ酸量がほぼ同等となるTPN 1号輸液製剤による1日2バッグ管理群とに分け、栄養評価、免疫学的評価、ビタミンB1動態に関して比較検討した。
    栄養・免疫学的指標は、術後5日目で両群間に有意差はみられず。術後5日目の血中ビタミンB1濃度は2バッグ管理群の方が高値であったが、両群とも全例基準値内で、両群間に有意差はなかった。術後5日目の尿中ビタミンB1濃度は、全例正常下限値以上であり、2バッグ管理群の方が有意に高値で、投与量が反映された結果と考えられた。以上より栄養・免疫学的評価、ビタミンB1動態からみると術後1週間程度であれば、いわゆるTPN3号輸液製剤1日1バッグでの管理は可能であると考えられた。本法は、心不全、腎不全、高齢者や低体重患者のなどの輸液量や熱量の過剰投与を避けたい症例への適応が考えられる。
原著
  • 田代 勝文, 東口 高志, 武田 悠子, 冨塚 利枝, 藤瀬 暢彰, 中村 強, 升永 博明, 伊藤 彰博
    2006 年 21 巻 2 号 p. 2_115-2_125
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/26
    ジャーナル フリー
    ペクチンにて固形化した栄養剤について、人工消化液による溶解性を検討するとともに、固形化栄養剤をラットの胃内に強制投与した場合の消化管内での形状変化とその移行、特に臨床上問題視されることが多い胃食道逆流や便性状に及ぼす影響に関して、基礎的研究を行った。
    溶解試験において、ペクチンを用いた固形化栄養剤は、寒天やゼラチンによる固形化栄養剤に比べ、人工胃液中では形状が維持され、人工腸液中ではゼラチンと同様に速やかに溶解することが認められた。また、ラットに胃内投与した場合、固形化栄養剤は液状栄養剤に比べ、胃内滞留時間を30分間程延長させたが、小腸内への移行後には投与栄養剤の物性の違いによる明らかな差は認められなかった。さらに、固形化栄養剤は液状栄養剤に比べ、口腔内逆流や食道内逆流を有意に抑制するとともに、下痢や軟便の発生頻度を有意に軽減することが認められた。
    以上の結果から、固形化栄養剤は液状栄養剤に比べ、胃内滞留時間を延長させるものの小腸内移行には影響を与えず、また胃内強制投与に伴って発生する胃食道逆流や下痢をいずれも抑制することが示唆された。
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