静脈経腸栄養
Online ISSN : 1881-3623
Print ISSN : 1344-4980
ISSN-L : 1344-4980
臨床経験
術式別にみた消化器癌患者に対する術前免疫増強栄養剤投与の有用性
三松 謙司大井田 尚継川崎 篤史加納 久雄藤江 俊雄斎野 容子辻 陽子荒居 典子佐伯 郁子大野 匡之
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 25 巻 2 号 p. 609-615

詳細
抄録

緒言:外科待機手術患者に対する免疫増強経腸栄養剤(Immune-enhancing enteral diet;IED)の術前投与が術後感染予防に有用とされているが,術式により手術侵襲は異なるため,免疫栄養としての効果も異なると考えられる.今回,当科で術前IED(インパクト®)を投与した症例を術式別に検討したので報告する.対象及び方法:対象は2005年1月から2008年12月までの消化器癌手術症例101例で,術前インパクト®投与47例(I群)と同時期の非投与54例(R群)の2群間に分けて比較検討した.検討項目は,投与期間と投与量からみたインパクト®投与コンプライアンス,インパクト®投与前後の血液データ(白血球,ヘモグロビン,総蛋白,アルブミン,コリンエステラーゼ)の変化,I群とR群における術後合併症(縫合不全,呼吸器合併症,Surgical site infection,術後膵液瘻(膵頭十二指腸切除のみ))発生頻度について比較検討した.また,食道切除では術後Systemic inflammatory response syndrome(SIRS)期間と術後人工呼吸器管理期間も検討した.結果:インパクト®投与群の術式別の内訳は,食道切除11例,胃切除10例,大腸切除8例,膵頭部十二指腸切除10例,肝切除8例であった.インパクト®投与のコンプライアンスは,術式による有意差は認められなかった.食道切除例においてインパクト®投与による白血球数の有意な増加が認められた.術後合併症では,食道切除における呼吸器合併症が有意に少なく,術後SIRS期間が短い傾向を認めた.結語:術式別の術前インパクト®投与の臨床効果は,手術侵襲が大きな食道切除にのみ認められた.

著者関連情報
© 2010 日本静脈経腸栄養学会
前の記事 次の記事
feedback
Top