2011 年 26 巻 2 号 p. 703-711
肝疾患への栄養サポートは大きく分けて, 急性肝不全と慢性肝不全への治療に分けられる. 急性肝不全では罹患前の栄養状態は良いことが多いが, 肝性脳症や脳浮腫によって早期の肝再生あるいは肝移植がなされなければ死に至る. したがって栄養療法は,移植までの橋渡し, あるいは早期肝再生を目的として行い, グルコース不耐性への配慮と適度なアミノ酸投与による高アンモニア血症の予防が重要である. 慢性肝不全患者では度々ビタミンやミネラルの欠乏症を伴った低栄養状態を呈するが, 慢性肝不全患者への栄養療法によって予後を改善する. 腹水合併患者では中程度の塩分制限が必要である. 多くの肝硬変患者では栄養素の代謝障害やタンパク要求量の増加を認めるが, 標準的な投与経路・組成による栄養療法が可能であり, 肝性脳症患者への高タンパク摂取は禁忌ではないが, 肝性脳症悪化患者ではタンパク不耐症と判断し分岐鎖アミノ酸投与を試すべきである.