抄録
急性膵炎、慢性膵炎は代表的な膵の炎症性疾患であるが、両者は病態生理、臨床経過ともに異なり、従って栄養管理も異なるアプローチが必要である。急性膵炎では、ほとんどを占める軽症~中等症例の栄養状態に問題はなく栄養治療が必要となることは少ないが、重症例では栄養障害のリスクが高く死亡率や合併症発症率にも関連するため栄養治療は重要である。従来は静脈栄養が主流だったが、膵外分泌刺激に対する安全性や予後改善効果より、最近では経腸栄養に移行してきている。一方慢性膵炎は、膵外分泌腺の進行性喪失に伴う消化・吸収障害が病態の特徴であるため高率に栄養障害を認め、さらに低栄養は死亡率増加にも関与する。したがって栄養管理は疼痛コントロールや膵酵素投与と同様に多角的な治療の一部に位置づけられる。一般に経口摂取に問題はなく栄養カウンセリングが中心で、経腸栄養や静脈栄養の必要性は少ない。なお、急性増悪期は急性膵炎に準じた栄養管理を行う。