静脈経腸栄養
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症例報告
腹腔鏡下腸瘻造設術を施行した重症心身障害者の1例
石丸 啓鈴木 秀明湯汲 俊悟松田 俊二大門 史佳徳田 桐子阿部 聖裕岩田 猛山本 吉浩渡部 祐司
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2012 年 27 巻 4 号 p. 1087-1090

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抄録

重症心身障害者の摂食栄養障害に対して、広く経腸栄養管理が普及してきた。しかしながら、重症心身障害者においては、多くの症例で長期間永続的に経腸栄養管理を続けることが多く、それに伴う合併症も問題になってくる。今回われわれは、腹腔鏡下腸瘻造設術を行った重症心身障害者の1例を経験した。症例は45歳女性。大島分類1。嚥下障害に対し経鼻胃管栄養を開始。最近、嘔吐および誤嚥性肺炎を繰り返すようになり低栄養状態となった。経鼻チューブを空腸まで進め経腸栄養を行ったところ嘔吐はなくなり栄養状態は改善した。平成23年7月25日、全身麻酔下に腹腔鏡下腸瘻造設術を施行した。周術期に合併症を認めず、術後7カ月現在経過良好である。近年、重症心身障害者の摂食嚥下障害に対し、経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG) などの低侵襲な手技が行われることが多い。しかし、重症心身障害者では、側彎や長期臥床に起因する胃や腸の位置異常がみとめられることが多く、胃食道逆流を起こしやすいと考えられている。自験例も術前から嘔吐を繰り返しており、胃食道逆流を合併していると考えられた。自験例においては、本術式により胃食道逆流を回避し、安全かつ確実に腸瘻による経腸栄養を行うことが可能であった。今後症例を重ね注意深い管理が必要であると考えられるが、本術式はさらなる経腸栄養の普及に貢献しうる術式と考えられた。

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© 2012 日本静脈経腸栄養学会
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