静脈経腸栄養
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27 巻, 4 号
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特集
  • 標葉 隆三郎
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1027-1030
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    平成23年3月11日、大津波を伴う大震災による混乱と救急医療を経験した。3月12日以降の福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染で、地域住民・病院職員が大量に避難したため、患者を移送し、病院閉鎖を余儀なくされた。
    混乱の中で出来たこと、出来なかったこと、その問題点と今後の課題をあげ、第14回福島NSTフォーラム (平成24年3月19日) に寄せられた各病院からのアンケートを一部紹介し、震災時の死体検案とともに災害医療の現状を報告する。
  • 神崎 初美
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1031-1034
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    ガソリン不足で食糧物資を運べないうえに、被災地域が広大、被災者は多数なため、需要に比べ圧倒的な供給不足が長く続き、災害後二週間は、被災者の食糧事情は非常に厳しいものだった。災害2ケ月後に行った栄養面での主な看護支援は、食事内容の改善への試み、ビタミン不足への対応、食中毒予防と対応であった。
  • 足立 香代子
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1035-1039
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    災害時には、日本栄養士会のJapan Dietetic Association -Disaster Assistance Team) (JDA-DAT) の一員として私を含め、多くのボランティアが現地に入った。このなかで、管理栄養士は、炊き出しも行ったが、主に食事支援と栄養支援活動をした。食事支援は、食材の適正手配と支援、有効利用をするための献立作成、衛生管理などであり、栄養支援は、避難所での栄養・食事相談や在宅での褥瘡ケア、起こりうる栄養障害を未然に防ぐための栄養アセスメントに基づいたケアプランなどを行った。活動が具体的にご理解いただけるように被災者との面談を通して実施した口内炎、下痢、食欲不振、便秘などの事例を示しながら記述した。災害時においても、栄養状態のアセスメントとそのケアができることが管理栄養士の役割だと思っている。
  • 岸本 裕充, 門井 謙典
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1041-1045
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    大規模災害時には、「口腔清掃」に始まり、「食べる」をゴールに見据えたオーラルマネジメントが必要とされる。なぜなら、口腔は呼吸器と消化器の共通の入り口であり、口腔の機能が低下・障害されると肺炎や低栄養に繋がるためである。
    「歯が痛い」、「義歯が破損した」というような歯科治療の必要性が明らかな場合は当然として、被災者から歯や口腔に関する訴えがなくても、潜在的なニーズの存在があることを念頭に、歯科との連携を図るべきである。
    筆者らの経験上、褥瘡対策やこころのケアを必要とする被災者は、口腔にも問題を抱えていることが多い。いずれも、「食べる、栄養に関連が深い」、そして「いきなり診せてもらうことが難しい」という点で共通している。したがって、褥瘡・口腔・こころを3点セットにし、歯科を含めた多職種によるチーム医療を、平時と同様に大規模災害時にも実践すべきであろう。
  • 石橋 悟
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1047-1050
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    当院では震災直後の病院機能は保たれ、ほぼ通常体制で災害医療を行ったが、急性期の栄養管理は全くできず、中心静脈栄養や経管栄養が安定して対応できるようになるまでは約1カ月を、院内給食における全食種対応、アレルギー対応、NST活動、栄養指導など、すべてにおいて通常体制に復帰するまで約2カ月を要した。
    この間の栄養管理を平時と同様に行えるようにするための新たな取り組みは現在のところ行っていない。あらゆる業務に多数の人数が割かれる災害時の院内対応においては、既存の職員だけでは全く人員不足で、また、栄養管理は優先順位が下がるため、もし本当に急性期の完全な栄養管理を目指すなら、物資の供給体制、院内の在庫管理、調理・調剤、配膳・配送、洗浄・廃棄のすべての段階での物的、人的な体制強化が必要になると思われる。
  • 鎌野 倫加
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1051-1056
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    東日本大震災は、2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した大津波及びその後に続いている余震により、引き起こされた大規模災害である。災害医療では、災害時に限られた医療資源 (医療従事者、薬品など) の中で、いかに多くの傷病者の命を救うかが求められる。そのため、傷病者の緊急度や重症度を考慮し、治療や搬送の優先順位に従い、搬送や治療を行うが、災害医療や看護の活動をしている医療従事者の殆どは救急医療や看護を日常業務から行っている。
    災害サイクルの経過により医療ニーズも変化し、災害医療に関わる医療従事者だけではなく、多職種による支援が被災地には必要である。災害支援には、多視角からの多職種によるアプローチが重要であり、東日本大震災の経験から災害時の栄養管理を考えると、災害サイクルに応じた栄養指導、栄養管理をすることが慢性疾患の悪化を防ぎ、合併症の予防につながると考えた。その中で、地域医療や在宅NSTの存在の大切さを感じた。今回は栄養管理に焦点を当て、平成23年4月30日~5月15日まで、宮城県気仙沼市で災害支援活動を行った時のことを交えながら災害時に栄養管理が必要とされることを述べたい。
  • 坂本 八千代
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1057-1061
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    災害発生後、ただちに水と食事の確保が問題になる。その災害の規模や、地域によって異なるが2011年4月独立行政法人 国立健康・栄養研究所と社団法人 (2012年4月から公益法人) 日本栄養士会が『災害時の栄養・支援マニュアル』 (以下、支援マニュアルと略) を作成しており、フェイズ0からフェイズ3の4段階に分けて対応をまとめている(表1)。フェイズ0~1の初期段階の支援、フェイズ2の中期の支援、フェイズ3の長期の支援と段階的に何が求められ、物質および支援の手をどう届けるか支援マニュアルを参考に冷静に判断し、情報を提供することが重要となる。平成18年3月に改訂された(社)新潟県栄養士会の栄養・食生活支援マニュアルも参考に栄養・食生活支援について述べる。
原著
  • 百崎 良, 田部井 功, 平本 淳, 山田 高広, 濱 裕宣, 小沼 宗大, 種村 陽子, 新見 昌央
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1063-1069
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    【目的】ペースト食誤嚥を検出するためのベッドサイドテスト「二段階トロミ水テスト」の高齢誤嚥性肺炎患者に対する有用性を検証する。
    【対象及び方法】咽頭期嚥下障害が疑われリハビリテーション科が介入を要した高齢誤嚥性肺炎患者80人を対象とした。検査は身体所見観察に重点をおいたプレテストを実施した後、トロミ水を用いたトロミ水飲みテストを行う二段階にて実施した。その後、ペースト食を用いた嚥下内視鏡検査を実施、検査の有用性を検証した。
    【結果】ペースト食誤嚥に対する検査の感度は93.9%、特異度は83.0%だった。また対照として同じプロトコールをトロミ水ではなく水を用いて実施したところ、特異度が74.5%と低下した。また検査は10分以内に施行可能であり、検査による有害事象はなかった。
    【結論】高齢誤嚥性肺炎患者のペースト食誤嚥に対するトロミ水を用いた本検査は水を用いた場合に比べ感度に遜色なく、特異度は改善され有用性が確認された。
  • 飯田 武, 小川 丈彦, 沖田 由美, 中嶋 直美, 藏田 明日香, 杉野 香代子, 勝原 優子, 矢木田 早苗, 黒川 典枝
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1071-1077
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    【目的】経皮内視鏡的胃瘻造設術Percutaneous endoscopic gastrostomy (以下PEGと略) を行った症例の長期予後について検討した。
    【方法】2000年から2009年までに当院でPEGを行った227例を対象に追跡調査を行った。
    【結果】追跡できたのは215例で平均追跡期間は559.2±521.2日。PEG後30日における生存率は95%、1年生存率は64.4%、5年生存率は25.1%であった。PEG前に誤嚥が経験されていた群はそれ以外の群に比し生存率が有意に低かった。PEG施行時におけるアルブミン (Alb) 値が3.0g/dL以上の群はそれ未満の群より、また小野寺の予後推定指数 (PNI) 35以上の群はそれ未満の群より生存率が有意に高く、その傾向は特にPEG施行後早期において顕著であった。
    【結論】胃瘻造設前の誤嚥経験の有無は重要な予後予測因子である。またAlb値やPNIは造設後早期の予後予測の指標として有用である。
  • 中西 敏博, 武内 有城, 井口 光孝, 壁谷 めぐみ, 新木 智映子, 菊地 文, 梅村 聡美, 田所 史江, 国井 智子, 細川 真波
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1079-1086
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    【目的】当院では入院時簡易栄養スクリーニング (Nutritional Simple Screening on Admission; 以下、NSSAと略) として、(1)標準体重比80%以下(2)褥瘡(3)経腸栄養も含めて食事摂取に問題(4)外見上栄養不良の4項目のうち1項目該当すれば栄養不良のリスクありとして栄養サポートチーム (Nutrition Support Team; 以下、NSTと略) が介入している。今回、NSSAの精度を主観的包括的栄養評価 (Subjective Global Assessment; 以下、SGAと略) と比較した。【方法】内科系病棟において2カ月の全入院患者245例にNSSAとSGAをそれぞれ独立して行い、身体計測・血液検査も含めてNSSAが適切に栄養不良患者を抽出しているか検討した。【結果】NSSAによるNST介入要61例は、NST介入不要184例に比較して有意にSGAによる栄養不良の重症度が高く、%三頭筋皮下脂肪厚、%上腕筋囲および血清アルブミン値は介入要群で有意に低値であった。NSSAは、SGAで判定した栄養不良症例に対して、感度87.2%、特異度86.5%と良好であった。【結語】NSSAは適切に栄養不良患者を抽出しており、簡便さの点から臨床的に有用であると思われた。
症例報告
  • 石丸 啓, 鈴木 秀明, 湯汲 俊悟, 松田 俊二, 大門 史佳, 徳田 桐子, 阿部 聖裕, 岩田 猛, 山本 吉浩, 渡部 祐司
    2012 年 27 巻 4 号 p. 1087-1090
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/28
    ジャーナル フリー
    重症心身障害者の摂食栄養障害に対して、広く経腸栄養管理が普及してきた。しかしながら、重症心身障害者においては、多くの症例で長期間永続的に経腸栄養管理を続けることが多く、それに伴う合併症も問題になってくる。今回われわれは、腹腔鏡下腸瘻造設術を行った重症心身障害者の1例を経験した。症例は45歳女性。大島分類1。嚥下障害に対し経鼻胃管栄養を開始。最近、嘔吐および誤嚥性肺炎を繰り返すようになり低栄養状態となった。経鼻チューブを空腸まで進め経腸栄養を行ったところ嘔吐はなくなり栄養状態は改善した。平成23年7月25日、全身麻酔下に腹腔鏡下腸瘻造設術を施行した。周術期に合併症を認めず、術後7カ月現在経過良好である。近年、重症心身障害者の摂食嚥下障害に対し、経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG) などの低侵襲な手技が行われることが多い。しかし、重症心身障害者では、側彎や長期臥床に起因する胃や腸の位置異常がみとめられることが多く、胃食道逆流を起こしやすいと考えられている。自験例も術前から嘔吐を繰り返しており、胃食道逆流を合併していると考えられた。自験例においては、本術式により胃食道逆流を回避し、安全かつ確実に腸瘻による経腸栄養を行うことが可能であった。今後症例を重ね注意深い管理が必要であると考えられるが、本術式はさらなる経腸栄養の普及に貢献しうる術式と考えられた。
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