抄録
10年来時々食後に嘔吐することがあった84歳女性。食後の嘔吐が頻回になり誤嚥性肺炎を繰り返した。肺炎治療のために禁食・絶食と床上安静を指示され、体重減少(-17%/6ヶ月)及び ADLの低下を認めた。嘔吐の原因は食道アカラシアでありバルーン拡張術で通過障害が改善したが、入院6ヶ月前までは生じていなかった高度の嚥下障害を併発していた。全身の骨格筋減少と身体機能低下からサルコペニアと診断。嚥下障害の原因は、嚥下障害を来たす他の疾患を除外しサルコペニアの嚥下障害であると判断した。嚥下訓練に加え栄養管理を徹底し、5ヶ月後には人工栄養から完全に離脱できた。高齢者では加齢による嚥下機能低下に加え、疾患治療中に低栄養・低活動を伴うことがあるため安易な禁食・絶食や床上安静に注意を払う必要性があると考えさせられた。