2020 年 56 巻 3 号 p. 457-462
母親は27歳,妊娠中期まで妊婦健診未受診で,妊娠31週6日にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染妊娠と判明した.診断が妊娠後期であったため,母体の血中HIV-RNA量が高値(2,700copies/mL)のまま在胎37週2日に予定帝王切開で出生した.分娩直前の母体へのジドブジン(AZT)点滴静脈内投与,分娩直後の児の全身と眼球の洗浄,入院後の児へのAZTシロップ(4mg/kg×2回/日,6週間)とネビラピンシロップ(12mg/回,日齢0,2,6の3回投与)による2剤併用療法と完全人工栄養により母子感染予防を行った.抗HIV薬による有害事象を認めなかった.出生直後,生後1カ月,5カ月,1歳時の血中HIV-RNAは検出されなかった.妊娠中無治療のHIV感染母体でも,新生児に適切な母子感染予防策とAZTとNVPの2剤併用療法を行うことで母子感染を防ぎえた.