日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
症例報告
胎児中大脳動脈収縮期最高血流速度測定が胎児娩出時期決定に寄与した巨大胎盤血管腫の一例
伊賀崎 麻里勝又 佳菜深田 せり乃水野 有里東堂 祐介徳永 直樹
著者情報
キーワード: chorioangioma, fetal anemia, MCA-PSV
ジャーナル フリー

2020 年 56 巻 3 号 p. 522-526

詳細
抄録

 直径4cmを超える巨大胎盤血管腫は8,000-50,000分娩に1例とされており,非常に稀である.羊水過多,胎児貧血などを合併することが多く,胎児機能不全や子宮内胎児死亡も起こりうる.今回,90mmを超える増大傾向の巨大胎盤血管腫を合併したが,胎児機能不全が起きる前に児娩出をしたことで良好な転帰をたどった1例を経験した.症例は34歳,2妊1産.妊娠34週に83mmの胎盤腫瘤を認め,胎盤血管腫が疑われた.妊娠35週に母体管理のため入院し,入院後腫瘤径は93mmに増大,胎児中大脳動脈収縮期最高血流速度から胎児貧血の進行が疑われたため緊急帝王切開とした.児は貧血を認めたが自然軽快し,日齢14で自宅退院した.本症例のように,羊水過多を認めずに胎児貧血のみを合併した胎盤血管腫は珍しい.胎児超音波検査を繰り返し,胎児貧血の進行を見逃さずに児娩出をしたことで,母児ともに良好な転帰となった.

著者関連情報
© 2020 日本周産期・新生児医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top