2020 年 56 巻 3 号 p. 527-532
COVID-19合併妊婦に対し帝王切開を行った症例を経験したため,当院での取り組みを中心に報告する.29歳の経産婦,妊娠37週時PCR検査陽性となり入院となった.軽度の倦怠感や味覚・嗅覚障害を認めた.ゾーニングや手術用防護具の選定,着脱訓練だけでなく病院全体でのシミュレーションを行い十分な準備の上帝王切開を行った.麻酔は脊椎くも膜下麻酔で行った.分娩後術後経過は良好で,児は出生後PCR検査3回連続陰性で生後11日目に退院,母はPCR2回連続陰性の退院基準を満たした術後19日目に退院した.医療従事者への感染は発生しなかった.COVID-19のような未知の感染症に対し指針がない状況下で各施設対応に迫られる場合もある.今回,病院全体だけでなく周辺医療機関の協力のもと準備を重ねつつ診療を行い,安全に完遂できた.安全な診療を遂行するには病院全体での事前練習やシミュレーションは効果的で必須である.