日本周産期・新生児医学会雑誌
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ワークショップ3「赤ちゃんにとって最適なNICU環境を考える」
赤ちゃんにとって最適な音環境とは?
有光 威志
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2021 年 56 巻 4 号 p. 610-612

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抄録

 早く生まれた赤ちゃんにとって最適なNICUの音環境は,家族のコミュニケーションと私たちの思いやりによって生まれます.赤ちゃんのあたたかい心と発達は出生前からの家族とのコミュニケーションにより育まれます.赤ちゃんは,胎内で触覚や聴覚などを通じて家族と双方向性コミュニケーションを取っています.早く生まれた赤ちゃんも,胎内にいる時と同じようにNICUで家族とコミュニケーションを取りながら育つことが好ましいと考えられます.そのため,近年では,早く生まれた赤ちゃんと家族が病院で一緒に過ごせる環境を整える動きが盛んになっています.しかし,残念ながら,新型コロナウイルス感染症の流行により,現在では家族と赤ちゃんが病院で一緒に過ごすことに様々な制限が生じています.家族と赤ちゃんが病院で一緒に過ごす時間は,家族の関係性を深め,赤ちゃんの情緒を育み発達を促します.赤ちゃんが病院で家族と一緒に過ごせる環境を整えることと感染対策の両立は難しい課題です.しかし,医療者も家族も生まれたすべての赤ちゃんがNICUで最適な環境で過ごしてほしいと願っています.赤ちゃんは胎児期から家族の声を聞いて育ち,出生直後から家族の声に特別な愛着を示します.この発表では,私たちの研究成果を中心に,お母さんの声と赤ちゃんのコミュニケーションに焦点を当てて脳科学の視点からご紹介します.このワークショップが病院における家族のコミュニケーション支援について改めて考える機会になれば幸いです.新型コロナウイルス感染症の流行している今,赤ちゃんが病院で家族と一緒に過ごせる環境を整える取り組みが広がることを祈っています.

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© 2021 日本周産期・新生児医学会
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