日本周産期・新生児医学会雑誌
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産科教育セミナー
実現性と浸透性を目指した胎児超音波形態スクリーニング
日高 庸博
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2021 年 56 巻 4 号 p. 649-656

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抄録

 はじめに

 超音波断層法を用いて胎児形態をスクリーニングするという概念は近年かなり広がっているが,臨床現場レベルでみると,まだまだ胎児疾患が胎児期に十分に同定されているとはいえず,重大な疾患の児がその疾患に気づかれないまま出生し新生児搬送されてくるケースは多い.特定の産婦人科医や検査技師が意識を高め超音波検査の技量を伸ばしている一方で,超音波での胎児形態評価に潜在的に苦手意識があって馴染めないでいる産婦人科医もきわめて多くいることを実感する.

 胎児超音波形態スクリーニング検査は“何かおかしい”を拾い上げるのが目的であり,診断名をつけたり予後予測を行ったり周産期管理指針を立てることは求められない.これらの役割は地域に数人いる特定の専門医が行えばよい.ただ,その特定の専門医のところにスクリーニング陽性例としてきちんと辿り着く必要がある.何かおかしいを広くピックアップしようという意識のもとでは,偽陽性はあるのが自然である.

 各自・各施設がそれぞれに胎児超音波検査の知識と技量を向上させていく努力は重要として,今回は,広く浸透しやすいことを意識し,なるべく簡便でかつ効率的に疾患が拾い上げられることを目指した妊娠中期以降の胎児超音波形態スクリーニングの一案を提示する.

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© 2021 日本周産期・新生児医学会
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