2021 年 56 巻 4 号 p. 673-675
研究をして良かったなと思うのは,どのような時でしょうか?科学的な真理が明らかになった,診療上の疑問に答えが出たなど様々あるかと思いますが,臨床家として一番嬉しいのは,研究の成果により実際の診療が変わり,多くの患者さんの治療や予後改善に役立った時だと思います.私はもともと産婦人科医で,大学院留学を経て,現在は国立成育医療研究センターで臨床研究に関する教育,相談対応や支援の仕事をしています.私自身も診療をしながらの研究をしていましたので,それがどんな感じかよく分かります.診療だけでも毎日とても忙しく,研究をして何とか学会発表まではたどり着くものの,論文発表にはなかなか至らないというのがよくあるパターンだと思います.しかし,やはりせっかく労力と時間と,そして患者さんの貴重なデータを使わせてもらって研究をしたのであれば,学術論文として広く世界に発信したいと皆さん考えておられると思います.そして,それが新しい治療法の開発や承認につながったり,診療ガイドラインがより良いものになるのに役立ったりして,広く日本中や世界中で使われて,患者さんやご家族の状況を良くしたいわけです.本日はそのために,どのように臨床研究をすすめて,そしてステップアップさせればいいかについてお話をしたいと思います.