2021 年 57 巻 1 号 p. 209-214
妊娠後期に特発性脳脊髄液減少症を発症した1例を経験した.39歳,G1P0,妊娠33週4日に突然の強い頭痛で発症し,入院管理した.臨床症状から脳脊髄液減少症と診断し保存的治療を行った.症状は改善せず,妊娠38週2日に硬膜外麻酔下での帝王切開分娩を行った.硬膜外麻酔時に一時的な呼吸抑制をきたし,術後の頸椎単純MRI検査でC7付近に硬膜穿孔を疑う所見を認め,診断を確定した.児は3,006gの女児で,Apgarスコア1分後8点,5分後9点であった.母体は術後1日目に頭痛が軽快し,育児に支障なく退院した.同疾患の妊娠合併例での管理に具体的な指針はなく,保存的治療で改善しない場合は症例毎に治療方針を検討し,選択することが必要である.