2021 年 57 巻 2 号 p. 275-281
[目的]心疾患合併妊娠は,本邦の総妊娠数の2-3%を占める.医療の進歩に伴い成人先天性心疾患は増加しており,今後,心疾患合併妊娠の管理を行う機会は増加すると予想される.今回,当院で経験した心疾患合併妊娠の分娩転帰をまとめ,妊娠管理における注意点を明らかにすることを目的とした.[方法]過去10年間の当院における心疾患合併妊娠を対象とし,母体背景,分娩転帰,産科合併症を生じた症例について検討した.[結果]心疾患合併妊娠32分娩のうち,産科合併症を6分娩(18.7%)認め,そのうち4分娩に治療を要する切迫早産を認めた.早産は6分娩(18.7%)で,硫酸マグネシウム・ステロイドによる治療後に右心不全を発症し妊娠30週で早産となった症例があった.[考察]切迫早産治療に使用する薬剤は循環動態に影響を及ぼしうるため,原疾患や残存病変,副作用を考慮して選択する必要があり,慎重な妊娠管理を要する.