2021 年 57 巻 2 号 p. 353-359
症例は在胎35週5日,一絨毛膜二羊膜性双胎の第1子として出生の男児.胎児期に心不全兆候の指摘なし.生後早期より循環障害を呈し双胎間輸血症候群受血児の疑いで搬送された.心不全と肺高血圧症に対する急性期治療にて循環不全から脱し小康状態となった後も,右心系の容量負荷所見と下行大動脈での拡張期逆流が遷延した.超音波検査で拡張した左総頸動脈と左頭蓋底の異常血流を認め,頭部画像検査で硬膜動静脈瘻と診断した.徐々に心不全が増悪し,日齢15で脳血管撮影下に主要流入血管である左外頸動脈の結紮遮断を行った.体重増加を待って血管内治療を行い,短絡路の完全遮断を得て再発なく経過している.現在8歳だが神経脱落症状を認めず,合併症の指摘のない双胎第2子と同程度の発達である.遷延する心不全症例では短絡量の多い頭蓋内動静脈短絡性疾患も考慮し,注意深く身体診察や画像検査を行うことが診断および治療法決定に有用だと考えられた.