2022 年 57 巻 4 号 p. 596-599
妊娠高血圧症候群(HDP)の中で,特に妊娠高血圧腎症(Preeclampsia:PE)は,母子ともに予後が不良であり,世界的にみると毎年7万人の母体死亡,50万人以上の新生児死亡を引き起こしている1).さらに,PEを発症した女性や,出生した子供が将来,高血圧,腎疾患,脳血管障害を引き起こすリスクが高くなることが知られており,生涯にわたり管理する必要がある.日本の研究者はよくHDPという用語を使用するが,海外では,妊娠高血圧(GH)はPE発症リスクの高い疾患として理解されており,PEの病因,病態,予知,予防法,治療法が主に研究されている.そのため,HDPを対象とした論文は少なく,多くの論文は最も予後が悪いPEを対象としたものである.このあたりの意識の違いは,日本では主に病因・病態が重要視されてきたが,欧米では予後が重要視されてきたことによる.