日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
原著
反復帝王切開における膀胱損傷の予防~気膀胱の導入~
長田 亮介髙野 宏太谷村 悟
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2022 年 58 巻 2 号 p. 278-281

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抄録

 反復帝王切開においては膀胱の腹壁への吊り上がりや子宮への癒着を認めることがあり,膀胱損傷の可能性を意識する必要がある.術中に膀胱の輪郭を明瞭にする方法として気膀胱があり,婦人科腹腔鏡手術領域では一部の術者によって行われている.帝王切開時の気膀胱についてはこれまでのところ報告されていない.今回,反復帝王切開症例における気膀胱の有用性および安全性について評価した.2020年1月から2021年6月に気膀胱実施に対して同意が得られた反復帝王切開症例において,周産期因子として年齢,分娩週数,母体BMI,手術時間,執刀から児娩出に要した時間,出血量,産褥期の発熱の有無,児の出生体重,Apgar Score,臍帯動脈血pHについて検討した.2019年7月から2021年6月の当院での気膀胱を行わなかった反復帝王切開症例を対照群とした.該当する気膀胱実施群は14例,対照群は23例であった.両群において膀胱損傷の合併は認めず,周産期因子における両群の差も認めなかった.気膀胱によって膀胱の輪郭が明瞭となり,腹膜の切開や子宮下節の展開を安心して行うことができたというのが術者の一致した意見であった.気膀胱の手技は簡便であり,問題となる合併症も認めず,反復帝王切開を安全に行う上で有用であった.

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© 2022 日本周産期・新生児医学会
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