日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
58 巻, 2 号
日本周産期・新生児医学会雑誌
選択された号の論文の33件中1~33を表示しています
レビュー
  • 森岡 一朗
    2022 年 58 巻 2 号 p. 226-232
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は,世界中に大流行し,周産期や新生児医療に大きな影響を与えた.本稿では,SARS-CoV-2感染妊婦から出生した新生児における生後早期のSARS-CoV-2検査陽性率,胎内感染,新生児の多系統炎症症候群,出生後の感染対策・検査,新生児の隔離方法,母乳栄養,新生児の隔離解除基準,面会制限および退院場所についての現状をまとめた.出生後の新生児のSARS-CoV-2検査陽性率は非常に低く,およそ2〜3%程度である.2022年6月現在(第6波時),わが国ではSARS-CoV-2は指定感染症としての対応がとられ,出生直後の母子同室管理や直接授乳は行われていない現状が続いている.しかし,SARS-CoV-2感染のハイリスク場所である病院という状況をよく理解し,適切な感染対策を行いながら,周産期新生児医療もSARS-CoV-2流行前は行っていた母子同室管理や母乳栄養などの通常の医療やケアに戻していくことを検討していく必要があろう.

原著
  • 林 一鷹, 中田 裕生, 土本 啓嗣, 金澤 亜錦
    2022 年 58 巻 2 号 p. 233-237
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     当院では初回監視培養を日齢0に行っていたが,日齢0では有意菌の検出が少ないと考えられたため,2019年から初回監視培養を日齢3に変更した.2015年1月から2020年12月までの6年間に当院NICUに入院した児を対象とし後方視的に検討した.院外出生児や先天性感染を疑う児は対象から除外した.日齢0は667例中151例(23%),日齢3は292例中263例(90%)で細菌が検出され,日齢3で有意に多かったが,経腟分娩で出生した児に関しては両群間で有意差は認めなかった.MRSAは日齢0では検出されず日齢3では9例検出された.ESBL産生E.coliは日齢0で9例,日齢3で5例検出された.9例の早発型感染症を認め,1例が血液培養陽性で,日齢0の監視培養から同種細菌が検出された.保菌状況の確認には日齢3での検査が有用だが,早発型感染症や母児感染の視点からは日齢0での検査も必要である.

  • 増井 大輔, 児玉 洋平, 古田 千左子, 中野 玲二
    2022 年 58 巻 2 号 p. 238-244
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     超早産児の新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)と絨毛膜羊膜炎(CAM)及び臍帯炎の関連について検討した報告はない.超早産児において,生後24時間以内にNO吸入療法(iNO)を要する重症PPHNの発症とCAM及び臍帯炎の関連について検討した.当院NICUに2016年から2020年に入院した超早産児から院外出生及び疾患症例を除外した121例を対象とした.生後24時間以内にiNOを要した群(iNO群)21例とコントロール群100例の臨床背景を比較した.iNO群21例中CAM III度は11例,臍帯炎は12例で,コントロール群100例中CAM III度は26例,臍帯炎は21例であった.iNO群ではCAM III度及び臍帯炎の合併率が有意に高かった.iNO施行期間の中央値は23時間8分であった.超早産児において重症PPHNの発症はCAM及び臍帯炎と有意な関連があることが示唆された.

  • 立山 彩子, 山本 亮, 武藤 はる香, 石井 桂介
    2022 年 58 巻 2 号 p. 245-249
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     [目的]Late preterm以降の妊娠高血圧症候群(HDP)合併妊娠における陣痛誘発症例の分娩転帰と母児の合併症の頻度を明らかにする.

     [方法]妊娠34週以降に分娩したHDP合併単胎妊娠で,陣痛誘発を行った症例を対象とした後方視的コホート研究である.帝王切開(CS)の頻度,分娩中の血圧重症化の頻度,産褥1カ月までの母体合併症と新生児合併症の頻度を検討した.

     [結果]対象は136例であった.分娩中に血圧軽症域の17例(24%)が重症域に,重症域の5例(9%)が高血圧緊急症となった.CSは39例(29%)であり,初産婦と経産婦のCS率はそれぞれ40%,6.1%であった.母体合併症は2例(1.5%)で,胎盤早期剥離と子癇発作がそれぞれ1例であった.新生児合併症はなかった.

     [結論]初産婦の6割,経産婦の9割が経腟分娩となり,母児の短期予後は良好であった.

  • 野呂 歩, 水島 正人, 内田 雅也, 塩野 展子, 里見 達郎, 本庄 遼太, 木下 貴正
    2022 年 58 巻 2 号 p. 250-257
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     今回我々は当院で2008年1月から2019年12月に出生し,管理した超低出生体重児のうち,未熟児網膜症の治療を行い,かつ修正1歳半以後で予後評価した58例を対象とし,光凝固療法群38例と抗VEGF療法群20例で中枢神経学的予後を比較した.重度神経障害ありはGMFCSレベル3以上脳性麻痺,修正1歳半以後の総DQまたは全検査IQが70未満のうち最低1つを満たす症例,神経障害ありは,GMFCS分類レベル1以上の脳性麻痺,総DQまたは全検査IQが85未満,自閉スペクトラム症のうち少なくとも1つを満たす症例と定義した.光凝固療法群対抗VEGF療法群でそれぞれ,再治療率は16%対10%,完全網膜剥離率は0%対0%,重度神経障害ありは29%対25%,神経障害ありは53%対40%,脳性麻痺ありは16%対10%で,いずれも有意差はなかった.抗VEGF療法は未熟児網膜症に有効かつ安全な治療と考えられた.

  • 平林 慧, 芹沢 麻里子, 平井 久也, 高橋 慎治, 山下 美和, 松井 浩之
    2022 年 58 巻 2 号 p. 258-262
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     2012年1月から2020年12月までの9年間に,浜松医療センターで施行した産科出血に対する子宮動脈塞栓術(UAE)14例について,患者背景やUAEの方法とその後の月経や妊娠・分娩における合併症との関連を検討した.

     UAE施行時の分娩週数は22週未満が7例,正期産が7例であった.正期産症例のUAE適応疾患の内訳は分娩後異常出血(PPH)5例,動静脈奇形1例,仮性動脈瘤1例であった.月経再開は11例で確認され,1例はAsherman症候群により無月経となった.UAE後の初回妊娠7例を管理し,2例で癒着胎盤をきたした.Asherman症候群をきたした1例と癒着胎盤をきたした2例のUAEの適応疾患はPPHであった.

     UAEは産科出血に対する有効な止血方法であるが,子宮内膜虚血による合併症に注意が必要である.特にPPHに対する分娩後早期のUAEが合併症発生の高リスクとなる可能性が考えられた.

  • 三枝 遥, 樋口 壽宏, 久保 のぞみ, 高折 彩, 池田 愛紗美, 河合 恵理, 山本 彩, 小薗 祐喜, 奥田 亜紀子
    2022 年 58 巻 2 号 p. 263-267
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     近年本邦では晩婚化や不妊治療の進歩に伴い高年初産婦が増加している.今回40歳以上の初産婦のリスクを明らかにすべく後方視的検討を行った.2017年から2020年に当施設で分娩した初産婦1,690例を分娩時の母体年齢で3群に分類し検討した.帝王切開率は年齢に伴い上昇していたが,その適応は差を認めなかった.自然陣痛での経腟分娩完遂例は高齢化に伴い減少し,予後規定因子は35歳未満であること,体外受精胚移植妊娠,妊娠高血圧症候群合併妊娠であった.また分娩時出血量は年齢に伴い増加し,予後規定因子は経腟分娩では体外受精胚移植による妊娠,分娩誘発・促進の実施であり,帝王切開分娩では前置胎盤,既往子宮手術後妊娠であった.一方新生児転帰は明らかな差を認めなかった.40歳超高年初産婦の分娩管理では年齢や妊娠背景を含む個々のリスク因子を考慮した,適切な陣痛管理と分娩時出血への備えが肝要と考えられた.

  • 則内 友博, 西 明, 丸山 憲一, 高澤 慎也, 藤代 準
    2022 年 58 巻 2 号 p. 268-272
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     近年,新生児の周術期予防的抗菌薬の投与期間および手術部位感染(SSI)についての現状が欧米を中心に報告され,長期に及びやすい新生児への抗菌薬投与期間の短縮が図られている.一方,日本国内からの報告は少なく,現状は明らかではない.そこで本研究では,NICU・GCUの患児の抗菌薬の投与方法,SSI発症率などを調査した.対象は2017年から2020年の間に当院にて小児外科領域の手術を行った新生児,周術期にNICU・GCUに入院中であった患児とし,診療録の記載から後方視的に調査した.SSIの発症率は7.8%(8例/103例)で,欧米での既報と同程度であった.抗菌薬の投与期間の中央値は4日間で,SSI発症群と非発症群との間で投与期間に有意差はなかった.これらの結果からは周術期予防的抗菌薬の投与期間が長い可能性が示唆されたが,今後大規模研究で検証していく必要がある.

  • 重富 典子, 長谷川 ゆり, 楠本 紗羅, 小松 菜穂子, 新谷 灯, 山田 美樹, 淵 直樹, 永田 愛, 朝永 千春, 三浦 清徳
    2022 年 58 巻 2 号 p. 273-277
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     プロテインS欠乏症は先天性血栓性素因のひとつで,その頻度は本邦における先天性血栓性素因の中では最も高い.血栓症以外の周産期合併症に遭遇することも少なくはない.2014年1月から2019年12月までに当科で分娩管理を行ったプロテインS欠乏症合併妊娠の7例について検討した.既往妊娠合併症として,人工妊娠中絶術後の下肢静脈血栓症を1例認めた.妊娠合併症は胎児発育不全1例,妊娠高血圧腎症1例,妊娠糖尿病2例であった.早産は2例であった.5例は児の血液検査を行い,2例はプロテインS欠乏症と診断した.妊娠中に血栓症を発症した例は1例で,産褥期に血栓症を認めた例はなく,出血性合併症を2例認めた.プロテインS欠乏症合併妊娠は,下肢静脈血栓症だけでなく子宮内胎児死亡や胎児発育不全,妊娠高血圧腎症といった周産期合併症に注意して管理する必要がある.

  • 長田 亮介, 髙野 宏太, 谷村 悟
    2022 年 58 巻 2 号 p. 278-281
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     反復帝王切開においては膀胱の腹壁への吊り上がりや子宮への癒着を認めることがあり,膀胱損傷の可能性を意識する必要がある.術中に膀胱の輪郭を明瞭にする方法として気膀胱があり,婦人科腹腔鏡手術領域では一部の術者によって行われている.帝王切開時の気膀胱についてはこれまでのところ報告されていない.今回,反復帝王切開症例における気膀胱の有用性および安全性について評価した.2020年1月から2021年6月に気膀胱実施に対して同意が得られた反復帝王切開症例において,周産期因子として年齢,分娩週数,母体BMI,手術時間,執刀から児娩出に要した時間,出血量,産褥期の発熱の有無,児の出生体重,Apgar Score,臍帯動脈血pHについて検討した.2019年7月から2021年6月の当院での気膀胱を行わなかった反復帝王切開症例を対照群とした.該当する気膀胱実施群は14例,対照群は23例であった.両群において膀胱損傷の合併は認めず,周産期因子における両群の差も認めなかった.気膀胱によって膀胱の輪郭が明瞭となり,腹膜の切開や子宮下節の展開を安心して行うことができたというのが術者の一致した意見であった.気膀胱の手技は簡便であり,問題となる合併症も認めず,反復帝王切開を安全に行う上で有用であった.

  • 信正 智輝, 池田 真規子, 黄 彩実, 別宮 史子, 白神 碧, 松井 克憲, 高石 侑, 増田 望穂, 松尾 精記, 安堂 有希子, 佐 ...
    2022 年 58 巻 2 号 p. 282-288
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     [目的]セプラフィルム®の帝王切開術における癒着防止効果を前方視的に検討した.

     [方法]初回帝王切開術を当科で施行し,今回2回目の帝王切開術を予定している症例を対象とした.臨床背景,癒着の程度,および母児の転帰をセプラフィルム®使用群と非使用群で比較検討した.

     [結果]初回,2回目とも当科で帝王切開術を施行した136例から,初回帝王切開術を妊娠32週未満に実施した14例と今回の帝王切開術で術中の癒着評価記録が行われなかった4例を除く118例を解析対象とした.解析対象の118例を初回帝王切開術時セプラフィルム®使用群(46例)と非使用群(72例)で比較検討した.セプラフィルム®使用群で大網-腹壁間,あるいは子宮-大網間に2度以上の癒着を有するものは有意に少なかった.執刀-児娩出時間,総手術時間,術中出血量,臍帯動脈血pHに差は認めなかった.

     [結論]セプラフィルム®による大網が関連する中等度以上の癒着を抑制する効果を認めたが,母児の臨床転帰に差は認めなかった.

  • 末永 英世, 青木 幹弘, 菅 幸恵, 安日 一郎
    2022 年 58 巻 2 号 p. 289-293
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     ポケットケムBGは小型血糖測定器であるが,開発時点で新生児試料における正確性のエビデンスが取得できなかったため新生児血の測定を適応外にしている.ポケットケムBGの新生児血における血糖測定についてPOCT12-A3の規格を用いてポケットケムBGと他2機種との相関性比較を実施した.2021年1月〜10月までに当院で出生し,検査前に患児家族に紙面による同意が得られた100症例を対象とした.ポケットケムBG3台と他2機種とあわせて5台の平均値を基準として,ポケットケムBG3台の精確性を各々検討したところ,3台ともに適合外が2.0%以内であり,POCT12-A3適合性基準をすべて満たした.ポケットケムBGは他2機種と同等の性能であると考えられ,新生児血でも測定が可能である.

  • 和田 友香, 諫山 哲哉, 河野 由美, 伊藤 裕司
    2022 年 58 巻 2 号 p. 294-299
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     先天性外科疾患を合併した児のフォローアップは実態が不明である.2020年6月〜2021年3月に全国のNICU 247施設にアンケート調査を行ったところ,164施設から回答を得た(66.4%).フォローアップ期間が6歳以上の長期であると回答された割合が高かった疾患は,先天性横隔膜ヘルニア,脊髄髄膜瘤,新生児期に非開心術を行った先天性心疾患で,フォローアッププロトコルがある疾患や原疾患の長期フォローアップが必要な疾患であった.長期フォローアップは外科医によるものであり,小児科・新生児科による発育・発達評価を含めたフォローアップは不十分であることが明らかとなった.また発達検査ができないことが課題であることも判明した.以上より先天性外科疾患を合併した児のフォローアップ体制を構築するためにはフォローアッププロトコルの作成,各地域での体制整備,質問紙などを用いた二段階のフォローアップ方法などが必要と考えられた.

症例報告
  • 川道 彩夏, 森内 芳, 川﨑 薫, 最上 晴太, 近藤 英治, 万代 昌紀
    2022 年 58 巻 2 号 p. 300-305
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     胎児リンパ管奇形は,全身のリンパ組織に生じる良性の先天的形成異常である.胎内で稀な発生部位である腰部リンパ管奇形が徐々に増大し,嚢胞内出血により慢性貧血に至った一例を経験したので報告する.症例は27歳初産婦.妊娠28週に初めて胎児の腰部腫瘤を指摘され,受診となった.超音波検査所見および骨盤MRI所見より,リンパ管奇形を疑った.腫瘤は徐々に増大し,妊娠38週6日に選択的帝王切開術を施行した.出生直後の採血にてHb8.0g/dLと腰部腫瘤内への出血に伴う貧血を認め,輸血を行った.出生後も腫瘤は増大し,腫瘤切除術を施行し,リンパ管奇形の診断に至った.胎児期に嚢胞の増大を認めるリンパ管奇形は,貧血や出生後の感染の可能性を考慮し,超音波検査やMRIにより嚢胞内出血の有無や貧血の進行を経時的に評価しながら,娩出時期や娩出方法を慎重に検討する必要がある.

  • 佐々木 涼介, 猪俣 慶, 南谷 曜平, 吉松 秀隆, 井上 武, 川瀬 昭彦
    2022 年 58 巻 2 号 p. 306-310
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     X;常染色体の不均衡型相互転座は稀な染色体異常である.今回我々はその中でも報告の少ないXと3番染色体の不均衡型相互転座をもつ新生児症例を経験した.症例は在胎40週3日,3,372gで出生した女児.眼裂斜上,鼻根部の平低化,耳介低位,小顎等の特異顔貌と心室中隔欠損をはじめとした形成異常から先天異常症候群が疑われた.呼吸障害に対する呼吸補助を行いながら,心室中隔欠損症に対して日齢27に肺動脈絞扼術を行うことで全身状態が安定化し,日齢120に自宅退院となった.染色体検査の結果,46, X, der(X)t(X;3)(q22.3;q12)であった.3番染色体の不均衡型相互転座は重症例や死亡例の報告が多いが,本症例では全身状態は良好であった.X染色体との転座であったことで,X染色体の不活性化機構により3番染色体部分トリソミー領域が選択的に不活性化され,症状が緩和された可能性が考えられた.

  • 浦上 裕行, 和田 芳郎, 木村 幸嗣, 山本 昌周, 住田 裕
    2022 年 58 巻 2 号 p. 311-315
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     在胎38週0日,他院にて帝王切開で出生した二絨毛膜二羊膜双胎の第一子,出生体重1,952g(-2.6SD)の胎児発育不全(FGR)を認めた.出生後も低血糖が遷延するため,日齢3に当院NICUに搬送入院となり,ブドウ糖投与速度(GIR)12.1mg/kg/minで輸液を開始した.日齢5の血糖45mg/dL時insulin 5.4μU/mLであったため,高インスリン血性低血糖症と診断し,ジアゾキシド投与(8mg/kg/day)を開始した.血糖値は安定したが,日齢7に血圧低下,浮腫,乏尿,心拡大を認め,ジアゾキシドによる心不全と診断した.同日ジアゾキシド中止,ハイドロコルチゾン(HDC)(初日量3mg/kg/day),カテコラミン投与にて,循環安定,血糖も安定した.ジアゾキシド使用中は浮腫,尿量や血圧などの循環状態に注意が必要である.

  • 尾﨑 江都子, 尾本 暁子, 田中 宏一, 鈴木 義也, 岡山 潤, 中田 恵美里, 井上 万里子, 生水 真紀夫
    2022 年 58 巻 2 号 p. 316-320
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     腎盂尿管移行部狭窄(ureteropelvic junction obstruction)による巨大水腎症が妊娠中に破綻し,反復穿刺により妊娠・分娩管理を行った症例を経験した.患者は1妊0産で,5年前に人間ドッグで無症候性の右巨大水腎症(19×12×12cm)を指摘され,経過観察を指示されていた.38歳で妊娠し妊娠23週までは順調に経過していた.妊娠23週に突然の右下腹部痛と血尿が出現し,腎盂腎杯内の出血が疑われた.保存的管理により症状は1週間で自然に軽快した.その後,水腎症の進行により右腎臓がさらに増大し腹部膨満感と食欲の低下が出現してきたため,腹部膨満感の軽減と拡張腎杯の再破綻の防止を目的に,妊娠31週と34週に右腎臓の穿刺排液を施行した.妊娠38週に3度目の穿刺排液後,分娩誘発を行った.健康な男児を経腟分娩した.穿刺排液は,妊娠中の巨大水腎症の管理の選択肢のひとつとなり得ると思われた.

  • 阿座上 舞, 横峯 正人, 武藤 愛, 坂本 宜隆, 堀之内 崇士, 吉里 俊幸, 牛嶋 公生
    2022 年 58 巻 2 号 p. 321-328
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     Retained products of conception(RPOC)は産科危機的出血の一因であるが,治療法は定まっておらず,方針により患者の生命予後,妊孕性は大きく変化する.今回,RPOCによる2度の出血性ショックをいずれも経カテーテル的動脈塞栓術で救命し,その後妊娠に至った症例を経験した.症例は35歳,初産婦,経腟分娩後に出血性ショックとなり,RPOCを確認後に子宮動脈塞栓術で止血した.その後の待機中に再度出血性ショックとなり2度目の塞栓術は内腸骨動脈本幹の塞栓を行い止血した.塞栓術による合併症はなく,術後Methotrexateの併用も行い治癒し,その後再度妊娠に至った.RPOCに対する治療法について,内腸骨動脈本幹の塞栓とMethotrexate投与を中心に文献的考察を行い,症例報告を行う.

  • 井上 翔太, 吉田 裕輔, 横井 太郎, 川村 陽一, 黒木 康富
    2022 年 58 巻 2 号 p. 329-333
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     症例はエチゾラム,ベンラファキシンを内服中の母体から在胎36週1日に出生した出生体重2,155gの男児.新生児薬物離脱症候群(Neonatal Abstinence Syndrome:NAS)に対して日齢2にフェノバルビタールを開始し離脱症状は改善したが,傾眠,哺乳不良,体重増加不良は持続した.日齢2から母乳を含む混合栄養を継続していたが,日齢12に人工乳のみへと切り替わった際,離脱症状の再燃を認めた.離脱症状が自然消退した以降は,活動性,哺乳量,体重増加も改善した.以上の経過から,フェノバルビタール開始後も持続した症状は母乳に移行した母体内服薬による新生児適応不全であり,一方で,母乳中断後の症状の再燃はNASの再燃が疑われた.NASは出生後のみならず母乳中断時にも再燃する危険性が示唆され,注意深いモニタリングが必要である.

  • 清水 陽彦, 小林 康祐, 丸山 陽介, 大藏 慶憲
    2022 年 58 巻 2 号 p. 334-340
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     妊娠子宮嵌頓症は,過度に後屈した妊娠子宮が増大して骨盤腔に嵌頓した状態であり,重篤な合併症をきたしうる.無症候性の妊娠子宮嵌頓症を第3三半期に診断し,合併症なく帝王切開を行った4症例を経験した.3例はダグラス窩を占拠する筋腫を認め,1例はダグラス窩の癒着によるものであった.いずれの症例でも,腟鏡診では子宮腟部が腹側へ極端に偏移し,MRI所見で子宮の後屈所見と内子宮口の頭側への移動および子宮頸部の過伸展を認めたことから本症を疑った.全例,帝王切開時に術中超音波検査を行い,子宮筋層切開部を決定した.このように,身体所見から本症を疑い,画像診断をもとに術式を選択したことで帝王切開時の合併症の回避につながった.

  • 森岡 裕彦, 山﨑 友美, 八幡 美穂, 宇山 拓澄, 綱掛 恵, 大森 由里子, 寺岡 有子, 古宇 家正, 向井 百合香, 工藤 美樹
    2022 年 58 巻 2 号 p. 341-345
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     妊娠中の感染性心内膜炎の発症は0.006〜0.0125%と報告されており,非常にまれである.感染性心内膜炎は弁膜や大血管内に疣腫を形成し,菌血症,血管塞栓,心障害などの多彩な症状を引き起こす全身性敗血症性疾患である.発症すると母児ともに極めて重症度が高く早急な対応が必要となるが,臨床症状は発熱や動悸など非特異的なものが多く,診断が遅れることがある.妊娠中に感染性心内膜炎の診断に至った場合は,母体の循環動態や児の成熟度などを総合的に判断し,母体の治療と分娩時期を検討する必要がある.妊娠中の不明熱に対して帝王切開術を行った後に,感染性心内膜炎と診断した1例を経験したので報告する.症例は28歳,2妊1産.妊娠35週に発熱と腹痛を主訴に受診した.血液培養検査でグラム陽性連鎖球菌が判明した.発熱と強い腹痛を認めたことからA群溶連菌感染症の可能性を考え,緊急帝王切開術を施行した.帝王切開術後,起因菌がStreptococcus gallolyticusであったことが判明した.聴診で心雑音を聴取し,心臓超音波検査では僧帽弁に疣贅を認め,感染性心内膜炎と診断した.帝王切開術後2日目に僧帽弁形成術を施行した.術後はペニシリンGを長期投与し,経過は良好であった.感染性心内膜炎は早急な診断と適切な治療を行うことが重要である.妊娠中に不明熱を認めた場合には,非妊娠時と同様に感染性心内膜炎も鑑別に挙げ,視診や聴診を含め十分な身体診察,原因検索を行うことが重要である.

  • 岡本 宗一郎, 水本 洋, 阿水 利沙, 池尻 誠, 小川 覚, 竹内 万彦, 秦 大資
    2022 年 58 巻 2 号 p. 346-352
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia:PCD)は70%以上の症例が新生児呼吸障害を呈するが,家族歴や内臓逆位がなければ早期診断は難しい.症例は在胎41週に出生体重3,400gで出生した女児で,日齢2に呼吸障害を発症し搬送された.胸部X線写真正面像で右上肺野に無気肺を認め,日齢5に右中肺野と左上肺野に新たに無気肺が出現した.去痰剤内服とsalbutamol sulfateの吸入,呼吸理学療法を開始後より無気肺は消退した.日齢20まで酸素投与が必要であり,日齢33に退院後も鼻汁と湿性咳嗽が続いた.このような経過からPCDを疑い,生後3カ月に鼻粘膜生検の電顕所見および遺伝子検査より確定診断した.新生児呼吸障害の原因は多岐にわたるが,出生直後よりも発症時期が遅いこと,呼吸障害が遷延すること,気管挿管と関連しない無気肺の存在は,PCDを疑う根拠となる.その後の経過観察において慢性的な鼻汁や湿性咳嗽があれば,診断のための特殊検査を検討するべきである.

  • 楠本 紗羅, 野々下 晃子, 吉田 敦, 村上 誠, 三浦 清徳
    2022 年 58 巻 2 号 p. 353-358
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     妊娠25週,全前置胎盤で,両児とも子宮内胎児死亡(IUFD)した一絨毛膜一羊膜性双胎を経験した.インフォームドコンセントを得て,帝王切開術ではなく経腟分娩を目標とした待機的管理を試みた.大量の性器出血が起こった場合には血管内治療(IVR)あるいは手術療法を速やかに実施できる体制を整え,1週間ごとに外来で超音波検査および血液検査(白血球数,CRP,血液凝固系および血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG))を行った.IUFD後27日目のMRIで胎盤の萎縮と胎盤血流の減少を認めた.IUFD後39日目,性器出血が増加したため入院した.血中hCGは371mIU/mLに低下していた.IUFD後41日目,自然に陣痛が発来し経腟分娩した.分娩所要時間は4時間41分,分娩時総出血量は845mLであった.検討するべき問題点はあるものの,前置胎盤を合併したIUFD例に対する待機的管理は有用な選択肢となり得る.

  • 中谷 恵理, 吉田 忍, 山本 由佳, 塚村 篤史, 西澤 嘉四郎
    2022 年 58 巻 2 号 p. 359-363
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     症例は24週,596gの早産,超低出生体重児である.在胎中から絨毛膜下血腫を指摘されておりアプガースコア1分値1点,5分値2点,10分値5点で出生,直ちに集中治療を開始した.日齢4より経腸栄養を開始したが,日齢8に血便,小腸内容の停滞や小腸拡張を認め,胎便関連性腸閉塞と診断した.穿孔は認めず,内科的加療を選択した.カテコラミンによる血圧維持と抗生剤投与を行い,日齢15から全部で6回のガストログラフィン注腸造影を行った.また,日齢17に甲状腺機能低下症と診断し,レボチロキシン補充を検討した.経腸栄養不可であったため,レボチロキシン注射薬を選択した.日齢27より消化管ガス蠕動を認め,以後排便があり,内科的加療が奏功した.甲状腺機能低下症へのレボチロキシン投与において,2020年6月より注射薬の使用が可能となり,今後新生児領域において治療選択の幅が広がることが期待される.

  • 内芝 舞実, 八木 重孝
    2022 年 58 巻 2 号 p. 364-368
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     つわりは,妊娠初期に悪心,嘔吐,食欲不振などの消化器症状を主症状として妊婦の50〜80%に生じるといわれており,妊娠12〜16週頃までに自然軽快することが多いが,症状が悪化して脱水や栄養障害,代謝障害を認めた場合には,妊娠悪阻という治療が必要な病状となる.

     今回,妊娠悪阻の入院管理中にBacterial translocationによるKlebsiella oxytocaを起炎菌とした敗血症を経験した.Bacterial translocationは腸管内の常在細菌が粘膜バリアを通過して体内に移行する状態をいい,長期間の経管栄養による栄養不良状態や,腸閉塞,免疫能の低下,腸粘膜萎縮などの基礎疾患を有する患者に生じ易いといわれている.妊娠初期に敗血症を発症する症例は少ないが,本症例では敗血症の早期診断,早期治療介入によって母児ともに救命し得たため報告する.

  • 中村 侑実, 安藤 智子, 中村 拓斗, 上田 真子, 鈴木 美帆, 伊藤 由美子, 手塚 敦子, 齋藤 愛, 坂堂 美央子, 廣村 勝彦, ...
    2022 年 58 巻 2 号 p. 369-373
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     重複子宮のうち片側の子宮頸管または腟が閉塞し,同側の腎無形成を伴ったミュラー管奇形は稀で,妊娠予後の報告は少ない.当院で経験した同側腎無形成を伴う片側閉塞性重複子宮合併妊娠7症例,9妊娠の周産期経過を報告する.7例中5例が腹痛のために病院受診し,留血腫に対し開窓術や片側子宮摘出術などの治療歴があった.妊娠子宮は9妊娠中健側5例,患側4例であった.健側妊娠1例は30週で原因不明の子宮内胎児死亡となった.生児を得た7例は全例頭位であったが,軟産道強靭や合併症のために帝王切開での出産となった.早産が3例,妊娠高血圧症候群が1例,妊娠高血圧腎症に伴う子宮内胎児発育不全を認めた症例が1例,出血多量となった症例が4例あった.このような子宮奇形合併妊娠に対し決まった管理の指針はないが,周産期合併症が増えることを予想し厳重な管理が求められる.

  • 大多尾 早紀, 岸上 真, 中田 有紀, 片山 義規, 中後 聡, 山中 巧, 原田 敦子
    2022 年 58 巻 2 号 p. 374-379
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     18トリソミーと脊髄髄膜瘤を合併し,胎児期よりご家族と話し合い診療方針を決定した2例を報告する.症例1:児は胎児期に18トリソミー・脊髄髄膜瘤・心室中隔欠損症を指摘され,ご家族は緩和ケアを希望した.在胎38週1日,体重1,978gで出生,日齢0に脊髄髄膜瘤に対し皮膚縫合のみ行った.その後児と過ごす中,ご家族は集中治療を希望し,髄膜瘤修復術・肺動脈絞扼術・気管切開術・心内修復術を施行し,1歳1カ月で退院した.症例2:児は胎児期に18トリソミー・脊髄髄膜瘤・臍帯ヘルニア・心室中隔欠損症を指摘され,ご家族は集中治療を希望した.在胎38週0日,体重1,348gで出生,日齢0に髄膜瘤修復術を行った.呼吸・水頭症増悪の懸念はあったが自宅で過ごすことを優先し,生後4カ月で退院した.脊髄髄膜瘤と18トリソミーの合併例では,児と家族が最善の時間を過ごすため柔軟に方針を選択していくことが重要である.

  • 赤坂 往倫範, 原田 直哉, 延原 一郎, 春田 典子, 東浦 友美, 藤井 肇
    2022 年 58 巻 2 号 p. 380-385
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     慢性好酸球性肺炎(chronic eosinophilic pneumonia:CEP)は,好酸球と活性化リンパ球が末梢気道から肺胞領域へ浸潤する病因不明の疾患で,妊娠と関連した既報は国内外を含め4例しかなく,産褥期に発症の報告例はない.症例は,25歳時に右足関節の好酸球性血管浮腫の既往があった.27歳時の第1子の分娩後23日目から発熱が続き,抗菌薬で軽快せず分娩後33日目に当院に紹介となった.胸部CTでCEPが疑われ,気管支鏡検査で肺胞洗浄液中の好酸球が68%と増多しており,経気管支肺生検でCEPと診断した.プレドニゾロン(PSL)30mg/日で改善するも,PSLを5mg/日未満にすると再燃するため,PSL 5mg/日で寛解を保った.29歳でこの維持量で第2子を妊娠し出産したが特記すべき異常はなかった.PSLの維持量が少ない寛解状態のCEPであれば安全に出産できる可能性がある.

  • 小齊平 千世佳, 西畠 信, 三浦 美沙, 谷口 貴之, 茨 聡, 上塘 正人
    2022 年 58 巻 2 号 p. 386-391
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     胎児水腫を伴う胎児頻脈性不整脈は胎児死亡率が高い.症例は,妊娠19週で胎児頻脈性不整脈と胎児水腫を指摘され当科紹介となった.

     当院初診時,持続する胎児上室頻拍と胎児水腫を認め,母体に抗不整脈薬を投与する経胎盤的治療が必要と考えられた.治療の準備を進めていたところ,頻拍発作頻度は減少し,その後胎児水腫も改善した.患者は再発することなく,妊娠37週で分娩に至った.分娩後の検査で出生児はWPW症候群と診断された.児は現在,神経学的な後遺症もなく経過している.

     胎児水腫は一般に予後不良であるが,頻拍発作が原因であれば,妊娠22週未満であっても,頻拍改善で予後も明らかな改善が望める.自然軽快の可能性も考慮しつつ,頻拍停止のための速やかな評価・介入が重要である.

  • 成見 莉紗, 高橋 宏典, 永山 志穂, 鈴木 寛正, 薄井 里英, 大口 昭英, 藤原 寛行
    2022 年 58 巻 2 号 p. 392-400
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     一過性大腿骨頭萎縮症(transient osteoporosis of the hip:TOH)は,大腿骨頭が一過性に萎縮する原因不明の疾患で,腰痛や臀部痛を伴うため,腰椎ヘルニアや坐骨神経痛等との鑑別に苦慮する.妊娠末期に好発し,多くは保存的治療で軽快するが,大腿骨頸部骨折を発症する場合もある.TOHは両側性に発症することがあり,発症時期が左右で異なることがある.発症時期が左右で異なった妊娠関連両側TOHを2例経験した.TOHを遅滞なく診断するためには複数回のMRI(magnetic resonance imaging)検査の施行が考慮される.

     医学中央雑誌,PubMedから妊娠関連TOHを検索し,計73例について検討した.このうち両側発症は31例(42%)に認められ,そのうち左右で発症時期が異なったのは19例(61%)であった.発症時期が異なった両側TOHは同時発症のそれよりも発症週数が早かった[26.8±4.2 vs. 31.9±3.4週,P=0.003].また,骨折を合併したTOHは骨折のないTOHに比し,双胎妊娠例[30 vs. 10%,OR(odds ratio)3.04(95% CI 1.08-8.58),P=0.04]や早産例[32 vs. 7%,OR 4.31(95% CI 1.21-15.4),P=0.02]において高率にみられた.

  • 岩田 秋香, 藁谷 深洋子, 沖村 浩之, 田中 佑輝子, 馬淵 亜希, 森 泰輔
    2022 年 58 巻 2 号 p. 401-406
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     びまん性肺胞出血(diffuse alveolar hemorrhage:DAH)は治療抵抗性で生命予後は不良である.その発症には全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)や抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)などの関与が知られているが,SLE/APS合併妊婦がDAHを発症した例はこれまで8例しか報告がない.今回われわれは,妊娠中期にDAHを発症し集学的治療を要したSLE/APS合併妊娠例を経験したので報告する.症例は41歳,4妊1産.妊娠23週に喀血のため救急搬送された.DAHと診断し,気管内挿管のうえステロイドおよびシクロホスファミドパルス療法を行い軽快した.妊娠25週に胎児機能不全となり緊急帝王切開術を行ったが児の予後は不良であった.DAHを伴うSLE/APS合併症妊娠例に対して,母体治療を優先し集学的治療を行った結果,母体救命しえた.

  • 長谷川 良実, 遠藤 方哉, 大野 菜, 松尾 知世, 内田 絵梨, 川野 藍子, 荒田 与志子, 中村 朋美
    2022 年 58 巻 2 号 p. 407-413
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     我々は分娩時の垂直感染によると考えられた基質拡張型βラクタマーゼ(extended spectrum beta-lactamase:ESBL)産生大腸菌による新生児重症細菌性髄膜炎症例を経験した.症例は在胎36週2日にB群溶血性連鎖球菌(Group B Streptococcus:GBS)培養検査未実施の妊婦より前期破水後4日目に出生した.出生時の血液培養検査からESBL産生大腸菌が検出され,同菌による細菌性髄膜炎と診断され治療を要した.

     全国的に妊婦のGBS検出を目的とした腟分泌物培養検査および母子感染予防は行われているが,そのほか薬剤耐性菌を対象とした検査を行っているという報告は少なく,その母子感染予防に確立した方法はない.新生児髄膜炎の予後は不良であり,特に大腸菌による髄膜炎は脳室炎,脳浮腫などを合併し,神経学的後遺症を残す頻度が高い.

     ESBL産生大腸菌の増加に伴い,今後その垂直感染のリスクも増加すると推測され,感染リスクに応じた検査方法,分娩時の管理方法を検討する必要性があると考えられた.

  • 林 藍, 木下 大介, 田邉 裕章, 砂田 真理子, 西村 陽
    2022 年 58 巻 2 号 p. 414-419
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/09
    ジャーナル フリー

     点状軟骨異形成症(chondrodysplasia punctata,CDP)の原因として,遺伝子異常以外にビタミンK(以下,VK)欠乏との関連が認識されている.今回VK欠乏による胎児期発症頭蓋内出血を主訴に入院し,後にCDPと診断した一例を経験したので報告する.CDPについてもVK欠乏の関与が疑われた.症例は38週,2,983g,重症新生児仮死で出生した男児.母体に基礎疾患や薬剤使用は認めなかった.出生時に頭蓋内出血を認め,PT,APTTの延長,PIVKA-IIの上昇を認めたため,VK欠乏症と診断した.さらに鼻根部平坦といった顔貌の特徴を認め,単純X線写真で脊椎周囲,大腿骨近位端周囲の点状石灰化を認めたことより,末節骨短縮型CDPと診断した.CDPについても,VK欠乏がその原因と考えられた.胎児期のVK欠乏を認めた場合にはCDPについても鑑別に挙げ,精査をすすめることが肝要である.

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