2023 年 58 巻 4 号 p. 627-629
はじめに
細胞が増殖し,多様な細胞に分化し,臓器を構成し,組み合わさることで「いのち」が生まれ,次世代に引き継がれる過程は古くから人々の興味を引きつけ,研究がなされていた.このような細胞のふるまいの基盤となる情報はDNAに組み込まれており,先人たちの研究の積み重ねにより,生体がどのようにDNAのゲノム情報を活用しているのかが明らかになってきた(図1).さらにはゲノム科学の進歩によりゲノム情報伝達の過程の停滞や破綻によりさまざまな疾患につながることも我々の知るところとなり,診療にも利用されている.
本稿では,これまでに明らかになっている「ゲノムの情報伝達の仕組み」について概説する.