2023 年 58 巻 4 号 p. 647-650
はじめに
現代医療において情報通信技術の果たす役割は極めて大きな部分を占めており,情報通信網のインフラ整備の拡充に伴い,医療分野における情報共有化は急速に進みつつある.幸か不幸かCOVID-19によりオンライン会議・学会を中心とした情報の共有化が急速に拡大する一方で,依然として医療技術の地域格差は歴然としており,とりわけ低侵襲外科手術を中心とした先端医療技術は,先進国の大都市とその周辺地域の患者しか享受することができないのも事実である.この地域格差を埋める意味で遠隔医療の果たす役割は重要であり,我々はこれまでに国産の手術支援システムを用いた遠隔医療の研究および実証実験を重ねてきた.手術支援システムを用いた遠隔手術は遠隔医療において最も厳しい条件をクリアし,かつ安全性が担保されることが必要となる.本稿では我々がこれまでに行ってきた実証実験の成果をもとに手術支援システムを用いた遠隔手術の普及の可能性と課題に関して解説する.