2023 年 59 巻 3 号 p. 323-329
近年の早産児医療においては,Family-Centered Careを中心に,家族の存在が重視されつつあるが,従来の研究に家族の声が反映されてこなかった.そこで早産児の母である自らが,早産児家族会のオンライン交流会へ非参与観察者として参加し,心理学的視点から家族の感情および語られる主題を抽出した.家族は様々な主題に対し,ネガティブ感情やポジティブ感情を抱き,それらは非言語的にも表出されていた.自助・共助・公助の枠組みで捉え直すと,家族交流会は自助を補う共助の場であり,公助として不足している行政や医療サービスを主題とした情報交換の場であると考えられた.一方で,家族交流会内でも,「生の感情」を抑制し,防衛を行いながら語る家族の姿もみられ,心理学的観点からは共助機能の限界も示された.今後は,早産児の誕生や養育に伴う家族の傷つきに配慮しつつ,家族にとっての心理的回復像を明らかにすることが求められる.