日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
胎児超音波検査で脱出腸管が一塊の高輝度腫瘤影を呈した複雑型腹壁破裂
尾山 貴章田村 賢太郎長岡 貢秀杉田 翔太郎中村 健太郎猪又 智実川﨑 裕香子平野 勝久米田 哲吉田 丈俊
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2023 年 59 巻 3 号 p. 416-420

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抄録

 腹壁破裂のうち,腸管の閉鎖や穿孔を伴う複雑型は依然として予後不良である.複雑型腹壁破裂では,早期娩出が腸管予後改善に寄与する可能性があるが,娩出時期に関するコンセンサスはない.症例は複雑型腹壁破裂の男児.母体は妊娠16週に胎児腹壁破裂を指摘され,妊娠28週に脱出腸管の拡張と壁肥厚を指摘された.妊娠30週に脱出腸管が一塊の高輝度腫瘤影を呈した.妊娠32週3日に陣痛のため緊急帝王切開で出生した.出生体重1,824g.腸管は厚い被膜で塊状に癒着し,腸穿孔を伴っていた.術中所見は,多発性小腸閉鎖・穿孔であった.その後,短腸症候群を発症し,生後1歳2カ月で体重2.4kg,有効な経腸栄養はできず中心静脈栄養に依存している.腹壁破裂において,胎児超音波検査で脱出腸管が一塊の高輝度腫瘤を呈することは腸管合併症を示唆する所見と考えられ,妊娠週数や胎児well-beingを鑑みて娩出時期を検討すべきである.

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© 2023 日本周産期・新生児医学会
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