日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
未分画ヘパリン予防投与への変更後に短期間で肺血栓塞栓症を発症し,妊娠を中絶した静脈血栓症合併妊娠の一例
杉浦 多佳子藤原 ありさ古賀 万里子田浦 裕三子蓮尾 泰之
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2023 年 59 巻 3 号 p. 421-425

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抄録

 抗凝固療法の変更後に短期間で増悪した静脈血栓症合併妊娠を報告する.32歳,4妊1産.2回目までの妊娠分娩歴に異常はなかった.30歳の妊娠時に下大静脈と両側総腸骨静脈の深部静脈血栓症を発症し,7週で中絶した.血栓性素因はなく,残存する下大静脈の病変に対しエドキサバントシル塩酸塩水和物の内服を継続し,今回は妊娠10週より抗凝固療法をヘパリンカルシウム10,000単位/日の皮下注射へ変更した.妊娠12週時のDダイマーが9.6μg/mLと高値で,造影CT検査で下大静脈血栓の増大と肺血栓塞栓を認め,ヘパリンナトリウム持続静脈内投与による治療を開始した.血小板数が5.4万/μLと低値でヘパリン起因性血小板減少症を要因として疑い,抗凝固療法をエドキサバントシル塩酸塩水和物に変更した.妊娠は15週で中絶した.非妊時より抗凝固療法を継続する場合,妊娠許可と継続時の抗凝固療法の選択には十分な検討が必要である.

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© 2023 日本周産期・新生児医学会
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