日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
症例報告
剖検により診断しえた新生児ヘモクロマトーシスの超早産児
山岸 賢也小竹 悠子今西 利之川畑 建清水 正樹中澤 温子
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 59 巻 3 号 p. 426-431

詳細
抄録

 新生児ヘモクロマトーシス(NH)は同種免疫学的機序により,肝臓および,膵臓などの網内系以外の諸臓器への鉄沈着を特徴とし,結果として重篤な肝障害を引き起こす予後不良な疾患である.診断基準は提唱されているが,診断することの難しい疾患である.今回我々の経験した症例は,在胎25週6日,出生体重1,056gの早産・極低出生体重児であり,生直後からの代謝性アシドーシス,高乳酸血症,貧血,播種性血管内凝固をきたし,治療に反応せず,生後43時間で多臓器不全により死亡した.死亡した病因が不明であったため,剖検を行ったところ,病理組織において肝細胞の広範な壊死と鉄の沈着を認め,母体血中の抗胎児肝IgG抗体により活性化されるC5b-9が,免疫組織染色にて肝細胞に陽性を示したため,NHと診断しえた.未熟性の強い早産児ではNH診断のための検査も限られるため,生前に診断することは容易ではない.原因不明の多臓器不全死亡症例ではNHも鑑別にあがるため,剖検が重要である.

著者関連情報
© 2023 日本周産期・新生児医学会
前の記事
feedback
Top