2024 年 60 巻 1 号 p. 78-83
目的:重症筋無力症(MG)合併妊娠では母児ともに重篤な転帰をとることがある.MGの経過と周産期転帰を検討し,最適な周産期管理を提言する.方法:当院で分娩となったMG女性11例17妊娠(1妊娠が双胎妊娠)を後方視的に検討した.結果:全例でMG診断から妊娠まで2年以上経過していた.2例5妊娠が寛解中の妊娠で,8例10妊娠が胸腺摘出術後であった.吸引分娩は1妊娠(5.9%),帝王切開分娩は3妊娠(17.6%)(産科的適応2妊娠,MG適応1妊娠)であった.妊娠中のMG増悪は妊娠中に減薬した1妊娠(5.9%)で,新生児一過性MGはこの症例の双胎両児(11.1%)に認めた.結論:妊娠中のMG増悪は1妊娠のみで,病勢が安定した状態で妊娠した場合,通常の周産期管理によるMG増悪のリスクは低いと考えられた.計画妊娠と共に適切な薬物治療,妊娠中と産褥期,新生児を含めた慎重な管理が望まれる.