抄録
(1)幼若乳児期の鼠径ヘルニア手術創感染に起因した後天性臍瘻の2例を経験した.生後6ヵ月以内の幼若乳児期は免疫, 解剖の面から考えても創感染を合併しやすく, 臍瘻へ発展しやすいと考えられた.(2)この時期の手術は容易に行うべきでないが, やむなく手術を行うときは創感染の防止に細心の注意を払うことが大切である.そのためには, 無駄のない手術操作, 術式とともに縫合糸の材質についても検討されてしかるべきである.(3)創感染に対する免疫防御機構の不充分なこの時期の鼠径ヘルニア手術後は, 充分な抗生物質投与を行った方がよいと考える.