食道静脈瘤のため15歳以下で手術を施行した小児門亢症15例を,術後長期間経過観察し,病型ごとに,予後,術式の効果を内視鏡所見,門脈造影,臨床経過の面より検討した.また,食道離断術前後,及び遠隔期での食道噴門運動機能を内圧学的に検討した.肝前性門脈閉塞症10例のうち,5歳以下で食道離断術,傍食道血行遮断術のみ施行した2例に術後胃出血がみられ,術後4-7年目に脾機能亢進に対しては脾動脈部分塞栓術,離断部肛門側食道および胃静脈瘤に対しては硬化療法が行われた.6歳以内に食道離断,傍食道血行遮断,摘脾,傍噴門胃体部血行遮断術(セット直達手術)が行われた2例は,術後10年以上経過後胃血流増大による胃出血がみられ,術後10-14年目に選択的胃動脈塞栓術を施行した.6歳以上でセット直達手術が行われた6例は術後10ヵ月-20年経過良好である.肝硬変,肝線維症でセット直達手術を施行した3例は,術後5年-14年消化管出血はない.特発性門亢症で摘脾,血行遮断が行われた2例は,術後2-9年消化管出血はないが,1例食道静脈瘤が残存している.小児門亢症の食道静脈瘤に対し,杉浦法に準じたセット直達手術は,概ね良好な成績で食道静脈瘤よりの再出血はなく,内視鏡的にも改善し,遠隔期の食道噴門運動機能も内圧学的に問題はなかった.肝前性門脈閉塞症では,門脈造影上加齢によっても求肝性ルートや肝内門脈枝への血流は発達せず,遠肝性副血行路が発達する症例があると考えられた.治療法として病型や年齢により直達手術の他,脾臓を温存する術式や,硬化療法,脾動脈部分塞栓術,選択的胃動脈塞栓術が今後検討される必要があると考えられた.