日本小児外科学会雑誌
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A/Jマウス神経芽腫 (C-1300) の肝転移に対する Prostaglandin I_2 誘導体 beraprost sodium の転移抑制効果
山崎 洋次吉澤 穣治金井 正樹桜井 健司
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1994 年 30 巻 5 号 p. 918-923

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抄録

血小板凝集抑制薬としては強力な抑制作用を有する Prostaglandin l_2 を化学的に安定させた beraprost sodium (BPS)の神経芽腫肝転移に対する抑制効果実験を行った.肝転移モデルはマウス神経芽腫 C-1300を A/J マウスの脾臓内に移植して作成した.対象群に比較して BPS 10μg 投与群では肝重量が有意に増加し(p=0.018),組織学的にも肝転移の増強が確認できた. 20μg 投与群では対象群より肝重量の低下がみられたが統計学的有意差は認められなかった(p=0.056). ところが30μg 投与群では対象群にくらべ統計学的に有意な低下が認められ(p=0.009),組織学的にも肝転移の抑制が観察できた.また皮下に移植した腫瘍に対する BPS の影響をみると,いずれの投与量においても直接的な腫瘍増殖作用も抑制作用も観察できなかった. 10μg 群で転移増強作用が認められた原因は明確ではないが,この投与量では BPS に存在する血流増加作用が抗血小板作用を上回ったためと推測する.つまり肝血流増加作用による「転移巣の増殖」が抗血小板作用による「着床抑制」を凌駕したためと考えられる. BPS の投与量,投与時期,作用機序の異なる抗血小板薬や抗腫瘍薬との併用については今後の研究課題である.

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© 1994 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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