日本小児外科学会雑誌
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神経芽腫培養細胞の接着・遊走を促進する因子 : LM 細胞が産生するラミニン様物質について
矢尾板 誠一大井 龍司林 富中村 潤菊地 百合子
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1994 年 30 巻 5 号 p. 930-938

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抄録

我々はマウス線維芽細胞由来の培養細胞株 LM の培養上清中に,神経芽腫培養細胞株の接着性を著しく高め,遊走を強く促進する活性を見いだした.神経芽腫に対する接着促進活性を指標にこの物質の精製を試みた所,この物質はゲル濾過では分子量100万程度に当たる部位にピークがあり,巨大蛋白分子と考えられた.精製されたこの物質には神経芽腫の接着を促進するだけでなく遊走を促進する活性があり,神経芽腫の浸潤性(Matrigel に対して)を高める事も示された.この神経芽腫細胞接着促進活性はカルシウム依存性で抗ラミニン抗体で中和され,この物質は可溶性のラミニンであると考えられた.神経芽腫が発現しているラミニン・リセプターを介しての作用であり,インテグリン α_6 β_1(VLA- 6)に対する抗体にてその作用は阻害されたので,主としてインテグリン α_6 β_1 を介しての作用であると考えられた.これらインテグリンの発現が神経芽腫の浸潤性・転移性に大きく関与していると考えられ,予後にも影響している可能性がある.

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© 1994 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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