日本小児外科学会雑誌
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新生児外科疾患術後の体重増加不良例に対する半消化態栄養剤の効果
大野 耕一連 利博津川 力西島 栄治義岡 孝子山岸 洋之松本 陽一
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1994 年 30 巻 7 号 p. 1253-1260

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抄録
新生児外科疾患術後に100ml/kg/day 以上の経口または経腸栄養開始後も体重増加が不良な11例に,成人用半消化態栄養剤 (以下,半消化態) を投与した. 対象の平均生下時体重は2602g で疾患は消化器疾患8例,呼吸器疾患2例,腹壁異常1例であった. 半消化態は casein,dextrin,米油にミネラル,ビタミンを配合したもので,これを平均日齢43日 (平均術後21日目) から投与カロリーの約30%に相当する量を母乳または調整粉乳に添加して計14回投与した. その結果,1) 半消化態添加前に比べて体重増加速度は有意に増加した. 2) 半消化態添加中と添加中止後を比較できた7回 (6例) では,投与カロリーはほぼ等しかったが添加中止後に体重増加速度が有意に鈍った. 3) 半消化態によると考えられる肝機能異常1例と下痢1例を認めた. 各々半消化態のカロリーを42.7から33.6%,70から33.3%に減少させることによって改善した. 新生児外科疾患の手術後,体重増加不良を呈する患児に半消化態を添加することによって著しい体重増加がみられた. 半消化態は単位当りのカロリーを増加させるだけでなく, 半消化態に含まれる多糖体が母乳および唾液中の amylase,小腸粘膜の brush border enzyme,大腸の嫌気性菌により有効に消化吸収されているものと考えられた. また添加中に肝機能異常と下痢がみられたことより,半消化態の添加量は投与カロリーの30-40%以下にとどめるのが安全と考えられた.
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© 1994 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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