日本小児外科学会雑誌
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神経芽腫における apoptosis の検討
岩田 光正岡部 郁夫大原 守貴松田 健野中 嗣明越永 従道黒須 康彦江角 真理子
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1995 年 31 巻 2 号 p. 180-185

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抄録
神経芽腫は自然消退を示す腫瘍としてよく知られているがその病態は明らかでない. この病態を解明する目的で,われわれは摘出材料を用い apoptosis 出現の有無および腫瘍増殖速度について検討した. 対象 : マススクリーニングにて発見された19例 (病期 I : 6,II : 3,III : 3,IVB : 2, IVs : 5). 方法1) apoptosis : 摘出材料より DNA を抽出後,ethidium bromide 染色した1.8% agarose gel で電気泳動し,ladder structure 出現の有無を検討した. ついで DNA を[α-^<32>P] dCTPで標識することにより感度を上げる Frank 法処理した後,同様に電気泳動し検討した. 2) 腫瘍増殖速度 : パラフィン切片を Hedley 法にて処理し,flow cytometry にて proliferating index (PI値) を求めた. 対照として進行例5例の PI 値も求めた. 3) その他,Shimada 組織型,N-myc 増幅,核 DNA ploidy,NSE 値についても測定した. 結果1) ladder structure は ethidium bromide 染色では19例中4例 (病期 I : 2,III : 1,IVs : 1) に認めるのみであったが. Frank 法処理で全例に証明された. 2) PI 値は病期 I : 15.7%,II : 21.0%,III : 14.3%,IVB : 23.5%,IVs : 20.5%で病期間に差はなかったが,進行例 (31.6%) に比し各病期とも有意 (P<0.05) に低かった. 3) ethidium bromide 染色にて ladder structure が確認された症例と各予後因子との間に相関は見られなかった. 結論: マス症例では全例に apoptosis が出現し,さらに腫瘍の低増殖速度が認められた. これらの事実はマス症例の腫瘍が自然消退の方向へ進みやすい腫瘍であることを示唆するものと思われた.
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© 1995 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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