日本小児外科学会雑誌
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下大静脈,右心房に腫瘍塞栓をきたしたウイルムス腫瘍の一例
江東 孝夫真家 雅彦栗山 裕黒田 浩明藤原 直松尾 浩三堀江 弘
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1995 年 31 巻 2 号 p. 231-236

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抄録
ウイルムス腫瘍に於て腫瘍塞栓を下大静脈を経て右心房まで進展するのは極めて稀である. 今回,腹痛,顔色不良を主訴に来院した2歳4ヵ月の女児を超音波検査,MRI 等により右腎静脈,下大静脈を経て,右心房まで腫瘍の進展みた右腎原発のウイルムス腫瘍と診断し,体外循環下に一期的に腹部腫瘍及び右房内の腫瘍塞栓を摘出し得た. 術後,腫瘍床,IVC,右房に21Gy の放射線治療を加えた. また,AMD にて強いアレルギー,痙攣等の副作用を認めたため4クールの使用でやめ,NWTS-3 regimen DD の AMD をすべて THP-ADM (ピラルビシン) に換えて有効な化学療法が施行でき治療を無事終了した. 術後,2年6ヶ月の現在,再発,転移はみられていない. 本疾患の様な診断に際し,腫瘍の血管内進展の判定に,非侵襲的な MRI,超音波検査は極めて有用な検査法であると思われる. また,その治療法において体外循環下での右房内の転移腫瘍と原発腫瘍の摘出を行う一期的手術と化学療法,放射線療法が有効である.
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© 1995 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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