1995 年 31 巻 7 号 p. 968-972
ラットにおいて, 各種の実験モデル (小腸移植実験, 腸間膜リンパ管の切離実験, Thiry-Vells loop, 腸間膜リンパ管の再疎通障害実験) における腸間膜リンパ管の再疎通ならびに腸間腹リンパ節の病理組織について検討した. 小腸移植実験では術後7日, 腸間膜リンバ管の切離では術後4日および Thiry-Vella loop では術後8日に, 腸間膜リンパ管造影により腸間膜リンパ管の再疎通を確認した. 腸間膜リンパ管の再疎通障害実験では, 術後早期でリンパ流のうっ滞による腸間腹リンバ管の拡張, 末梢リンパ管への逆流, 側副路やリンパ洞静脈瘻形成など, 又, 術後晩期で乳糜腹水の原因と考えられる末梢リンパ管での造影剤のもれを認めた. 腸間膜リンパ節の病理組織学的検討では, 腸間膜リンパ管の再疎通が腸間膜リンパ管造影で確認されていても, 術後早期のみならず術後晩期でも腸間膜リンパ節内の一部にリンパ洞の拡張が存在していた. 小腸移植や消化器系手術術後における腸間膜リンパ管の再疎通は重要な問題であり, 術後の脂肪吸収障害, 乳糜腹水, 蛋白漏出性腸症などの合併症について長期にわたる経過観察が必要と考えられた.