日本小児外科学会雑誌
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腸閉鎖・狭窄症術後の消化管通過障害と拡張腸管の関連
高橋 篤松山 四郎鈴木 則夫黒岩 実池田 均友政 剛
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1995 年 31 巻 7 号 p. 978-984

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抄録
新生児腸閉鎖・狭窄症の自験50症例について, 術後の消化管通過障害や拡張腸管の発生とそれらの相関を中心に臨床的検討を行った. その結果, (1)多くの空腸閉鎖症術後に高度な消化管通過障害(86%)と拡張腸管(50%)か認められ, 通過障害遷延のため再手術が14例中4例 (28%) に行われた. (2)十二指腸閉鎖症では空腸閉鎖症と比べ術後の経腸栄養がより早期に開始あるいは終了出来ており, 通過障害のための再手術例はなかった. (3)通過障害は高度な拡張腸管を伴う場合が有意に多く, 通過障害の誘因として拡張腸管の存在と消化管合併疾患の存在が有意差を持って同定された. (4)腸管拡張の誘因として閉鎖部位が十二指腸あるいは空腸にあることが有意差を持って同定された. (5)十二指腸閉鎖・狭窄症の通過障害や腸管拡張の誘因として拡張腸管の存在以外に閉鎖の場合, 術前の腸管拡張の程度が高度な場合, 術後合併症を併発した場合, 消化管合併疾患を持つ場合が有意差を持って同定された. (6)未熟児, 低出生体重児, 心奇形, ダウン症は腸管拡張の負の誘因として同定された. (7)空回腸閉鎖症の通過障害や腸管拡張の誘因として拡張腸管の存在以外に多発閉鎖や apple peel 型の場合, 術前の腸管拡張の程度が高度な場合, 閉鎖部位か空腸上部の場合が有意差を持って同定された. 以上より, 腸閉鎖・狭窄症術後通過障害の原因の一つに拡張腸管の存在が示唆された. 空腸閉鎖症, 特に上部空腸閉鎖症, 術前の腸管拡張か高度な場合, 多発閉鎖や apple peel 型の場合こは拡張腸管縫縮術などの積極的な治療か必要と考えられる.
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© 1995 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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