日本小児外科学会雑誌
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胎児超音波検査による肺胸郭断面積比(LT比)の計測,及び先天性横隔膜ヘルニアにおける出生前診断,及び重症度の判定
長谷川 利路
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1996 年 32 巻 2 号 p. 276-284

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抄録

胎児超音波検査を用いて肺胸郭断面積比(LT比)を計測する方法を検討した.胎児の心4-chamber と両側の肋骨を全周にわたって含む胸部横断面にて心拡張末期に両側肺断面積と胸郭の断面積を計測し,両者の比を LT比と定義した.計測値の再現性は,胎児の異なる体位による変動係数3.0〜16.5%,平均8.3%, 検者間変動係数3.3-10、9%,平均6.4%であった.妊娠17〜38週の156例の健常胎児対照群の LT比は0.43〜0.64で,妊娠週数17〜20週, 21〜25週, 26〜30週, 31〜35週,36〜38週の5群間に有意の差は見られず,mean±SD は0.52±0.04であった.横隔膜ヘルニア17例の LT比は0.08〜0.42で, mean±SD は0.20±0.09と,健常対照群に比し有意に低値を示した.心奇形合併のない13例において出生後の preductal の動脈血ガスデータより求めた PO_2, A-aDO_2, PH, PCO_2と LT比との間に有意の相関がみられた.また LT比0.2未満と0.2以上の2群間で, HFO, ECMO 施行のやむなきに至った症例の割合,生存率との間に有意の相関がみられた.以上より,LT比は横隔膜ヘルニアの重症度を反映することが示唆され,臨床的に計測可能な出生前指標となりうると思われた.

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