1996 年 32 巻 6 号 p. 918-925
極型の直腸肛門狭窄を伴った Currarino 症候群の1例を経験したので,文献例62例の検討と併せて報告する.症例は8箇月の男児で高位鎖肛として紹介入院となった.入院後の検査では Currarino 三微として知られる仙骨の下部半欠損,仙骨前の腫瘍に加えて色素の通過によって確認された極型の直腸肛門狭窄が認められた.手術は仙骨前腫瘍を全摘した後,正常部直腸を pull through した.文献例と自験例をあわせた本症候群63例の検討では,本症に伴う直腸肛門奇形は低位型が多く,女児では直腸腟瘻を伴うことが多い一方で,仙骨前腫瘍の病理に間しては,一定の傾向が得られなかった.これらより,本症候群の病因として,仙骨前腫瘍の空間占拠による器官形成期晩期の微小環境の変化が考えられた.