日本小児外科学会雑誌
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乳児期に腎性高血圧を呈した膀胱尿管逆流現象の1例
秦 信輔川原 央好田中 丈夫川口 浩史
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1997 年 33 巻 2 号 p. 299-303

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抄録

膀胱尿管逆流現象 (以下 VUR) に伴う腎性高血圧は逆流性腎症を原因とし主に思春期以降に発症するとされているが,今回我々は乳児期に腎性高血圧を合併した VUR の1例を経験した.症例は7か月男児で発熱を主訴に外来受診した.尿路感染を指摘され排尿時膀胱尿道造影を施行したところ左側 Grade V の VUR と診断された. DMSA シンチグラム及びレノグラムにて左腎は低形成及び機能低下を示した.高血圧を呈したため原因検索をしたところ,レニン,アンギオテンシン,アルドステロン系の高値が認められ腎性高血圧と診断された.降圧剤により血圧が安定した後,左側膀胱尿管新吻合術を行った.術後2か月頃より高血圧は消失し,術後6か月以降はレニン,アンギオテンシン,アルドステロン値も正常化した.術前の腎性高血圧の原因は明らかではないが術後高血圧が正常化したことより,高度な逆流現象に起因する腎実質の可逆的虚血性変化が起こっていたと考えられる.

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© 1997 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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