1997 年 33 巻 7 号 p. 1129-1133
症例は10歳男児で,4年前の学校検診時の胸部 X 線写真で異常陰影を認めていたが放置されていた.発熱,咳嗽を主訴に近医を受診し,胸部 X 線写真で右下肺野に異常陰影を指摘され当科に入院した. CT および気管支鏡にて右下葉気管支に腫瘍を認めたため手術を施行した.腫瘍は気管支腺由来と考えられ,全体に異型は乏しく一見良性の腺腫のようであったが,ごく一部に核分裂像を認めたため low grade malignancy と診断した.組織像は通常の気管支腫瘍分類にあてはまるものではなかった.患児は術後8ヵ月の現在,明らかな再発,転移は認めず健在である.小児の気管支原発腫瘍の症状は主に発熱,咳嗽などの気管支炎,肺炎症状または気道閉塞症状であり,腫瘍に特有の症状を認めないことが多いため発見されにくく,注意を要する.気管支炎あるいは喘息様症状をくりかえす小児では,気管支原発腫瘍も念頭において検査を進める必要がある.