1998 年 34 巻 4 号 p. 800-807
胎児ECMO下における胎児肺の成熟について気管結紮による効果を検討した.在胎120∿130日(満150日)の山羊胎児を帝王切開して, 臍帯動・静脈を用いたA-V ECMOを開始し, 40℃に加温した恒温槽の中に胎児を移し, 10∿15cm沈め, 水中で保育した.ECMO施行の8例を気管結紮例の4例と気管開放例の4例とにわけ, ECMOを施行しなかった双胎児4例を非ECMO例(在胎125日のbaseline data)とし, この時点より肺の成長や成熟がどのように進むかを検討した.ECMO時間は気管開放例は107±41時間, 気管結紮例は139±67時間, ECMO終了後の体重は, 気管結紮例においてECMO開始時の体重より有意に増加した.肺組織中のレシチンおよび飽和レシチンは非ECMO例, 気管開放例, 気管結紮例の順に高い傾向を示したが, 非ECMO例と気管結紮例において有意差を認めた.湿肺重量, 乾燥肺重量, 乾燥肺体重比は気管結紮例が非ECMO例より有意に増加した.一方, 電子顕微鏡所見はII型細胞数/肺胞上皮細胞数(%)において非ECMO例より気管開放例, 気管結紮例が有意に増加した.また, コルチゾールは, 非ECMO例より気管結紮例が有意に高い値を示し, さらにT3は非ECMO例, 気管開放例, 気管結紮例の順に有意に上昇した.気管開放例, 気管結紮例では各々2例で胎児呼吸様運動が出現した.水中保育下の胎児ECMOにおいて, 気管結紮が, 肺重量, サーファクタント, 肺胞II型細胞の増加に有効に作用していることが呈示された.