抄録
小児では極めてまれな外傷性の遅発性小腸狭窄症(以下本症)を経験した.患児は11歳, 女児.自転車ハンドルで左下腹部を打撲.受傷5日目より間歇的腹痛が受傷9日目より嘔吐が出現し, 近医に入院.イレウスの診断で管理されたが, 急性虫垂炎も疑われ手術が行われた.虫垂に炎症はなく, 空腸に数カ所spasm様の所見が認められた.術後もイレウス症状が持続するため当科に紹介された.小腸造影で狭窄部が確認され, 小腸狭窄の診断で受傷1カ月目に手術を行った.回盲部から270cm口側の狭窄部を切除した.狭窄部には潰瘍が存在し, 粘膜下層の線維化を伴う虚血性変化が見られた.集計し得た本症の本邦報告例は自験例を含め44例で, 15歳以下は6例のみであった.本症は遅発性にイレウス症状が生じるのが特徴で, 不可逆性の線維化による狭窄であるため手術が必要である.